第50話

「…ふ、ふざけるな!!


僕があそこまでしてやったというのに…」


「 “してやった” ……ねぇ?


違うだろ?


お前が俺と友達になりたいって頭下げたんだろ?」




ジェラルドの言葉を途中で奪う


そして、ジェラルドが立ち上がっているから物理的には見上げているのだが、ティオナットはジェラルドの全てを見下ろしていた


ジェラルドは顔を真っ赤にしたまま言葉を失う


それを見て口の端を歪めたティオナット


そして、そこでいつもよりとても早く担任のルーカスが教室へ顔を出した


時計を見るとHRが始まるちょうどの時間なので本来ならこれが普通なのだが、ここは面倒臭がりのルーカスが担任を務めているクラスだ


いつも、1時限目の授業が始まる2分ほど前に来て、連絡を教室のドアから顔を出して述べるだけで終わっているのだ


他のクラスでは考えられない事だが、ルーカスが担任しているクラスはこれが通常となってしまっている


だから、本当ならこれが普通な事だがティオナットを含め、クラスの皆は驚く




「おーいお前ら!


体育祭優勝すんぞゴラァ!!」




そして更にルーカスのやる気に満ち満ちた声に全員が驚かされる


ざわざわとクラス内が騒つく


ルーカスのやる気のある発言に驚く者、ルーカスの 体育祭優勝 という言葉に訝しむ者、ルーカスが早い時間から教室にいる事に驚く者


反応は皆様々だった


ティオナットはというと、どうでも良さそうな顔をしてルーカスを見ていた




「……ぜってぇ、なんか賭けてんだろ…」


「お前ら体育祭、絶対優勝するからな!


お前らにも嬉しいお知らせだ!


優勝したクラスは1ヶ月間食堂無料!!


クラス担任はボーナスアップ!!!


俺はお前らに賭けてるからな、絶対優勝しろよ!


………優勝したら最高級焼肉食べ放題…!!!」




ティオナットがぽつりと呟いた後にルーカスが叫ぶ


クラスメート達は1ヶ月食堂無料で浮かれて聞こえていなかった様だが、ティオナットには最後まで聞こえていた


ルーカスが賭けをしている事を…


きっとこの賭けは、教員全体でやっている物なのだろう


それに呆れて、ティオナットは盛大にため息を溢すが、周りが煩く歓喜していたから、誰にも聞かれなかった

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