第10話

翌朝、僕はいつもとは違う目覚まし音で目を覚ました


何となくまだ起きたくなくて布団の中でもぞもぞしていると、隆幸から声を掛けられた




「楓、起きろ


そろそろ起きないと遅刻するぞ」




遅刻という言葉に僕は布団から顔を出す


ベッドわきに置いてある目覚まし時計を見ると、その針はもう7時半を指していた




「ほげ!!


ゆっくり寝すぎた!」


「朝食、テーブルに置いてるからちゃんと食えよー」


「ありがとー!!」




僕が慌ててベッドから這い出た背中に隆幸の声がかかり、洗面所へ急ぎながら礼を言う


洗面所で顔を洗い歯磨きをして寝癖も直して隆幸に借りていたTシャツを脱いで洗濯籠に入れる


そのあと部屋に戻って制服を着て、隆幸が準備してくれていた朝食を急いで食べる


ちなみに、今日の朝食は焼いたトーストにチーズが乗っていた


まだパンもチーズも暖かかったので、チーズがびろーんと伸びる


それをうまうまと平らげて、最後に横に置いてあった牛乳を一気飲みする




「んはぁー、美味しかった!


ご馳走様!」


「ん、お粗末様


ひげがついてるぞ」




隆幸に口元の牛乳の後を指摘されてティッシュでそれを拭う


食器をシンクに下げて、時間を確認すると洗ってる時間くらいはあったので、食器を洗う


その後、隆幸からお皿は洗ったらそのままでいいと言われたので、洗い終わった手を拭き、通学鞄を持つ


隆幸も準備は終わっていたみたいで、待たせてしまったようだ




「遅くなってごめん、後ご飯用意しててくれてありがとう」


「いいよ別に


てか、もう出ようぜ


これ以上遅くなったらホントに遅刻するから」




隆幸の言葉にうなずき、僕たちは学校へ登校する


僕は、学校へ行く途中で、ふと思い出したことがあった


昨日、ソファーで寝てしまったと思っていたのだが、今朝起きたら僕はベッドで寝ていたのだ


僕が隆幸のシャワー待ちしていた後の記憶がないから、その後起きたりしていないと思うのだが…




「…ねぇ、隆幸


僕、昨日ソファーで寝落ちしちゃった気がするんだけどさ、起きたらベッドに居たよね?


…もしかしてだけど、ベッドまで運んでくれた?」


「あぁ、風呂から出たらお前ソファーで爆睡してて起きなかったから、ベッドまで運んだよ」




隆幸の回答に、僕の疑問は氷解する


なるほど、隆幸が僕をベッドまで運んでくれたと…


………あれ?


ベッドは確か、シングルだったはずだけど…




「運んでくれてありがとう


…ちなみに、隆幸はどこで寝たの…?」


「ん?


あぁ、一緒にベッドで寝たよ


お前ちっこいから抱いて寝れば、寝れないことはない」




聞き方によっては誤解を生みそうな隆幸の言葉に僕が何かを言う前に、第三者の声に阻まれた




「え!?


お前ら仲がいいなて思ってたけど、付き合ってたのか!!?」


「へ!?


ち、ちがっ」


「おいおい、そんな食い気味に否定してたら事実だって言ってるのと一緒だぞ~


大丈夫、俺がお前らの仲を広めといてやるから!


これでお前らも晴れて公認カップルだな!」




わはははと大口を開けて笑いながら誤解したまま、噂大好きなクラスメイトが走って行ってしまった


というか、本当に違うから否定していたのに、それがさらに誤解を確信に変えてしまったようだ


それよりも、そもそも僕は遊上くんと付き合ってるのに隆幸と付き合ってるなんて噂を流されたら…


そんな想像をしてさぁっと僕の顔は青ざめる

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