第5話
「…隆幸には全部ばれてたのかー…
これじゃぁ僕、隆幸の前じゃ嘘つけないね」
へらりと笑いながらそう言いうと、隆幸の眉間に少し皺が寄った
「……別に俺の前でくらい、そんな取り繕わなくても良いだろ」
「…え?」
いつもより少しだけ低い隆幸の声に内心ビビる
ちょっと怖い
「お前がそうやってだらしなく笑うときは、いつも何かを誤魔化してる時なんだよ
今は俺とお前の2人だけなんだから、泣きたいなら泣いたっていいんだ
ていうか、泣け
泣いて心ン中のもん全部吐き出してすっきりしてしまえ」
隆幸のその言葉に僕の心は大きく揺れる
すでに迷惑かけているのに、さっきも泣いて世話やかせたのに
僕の瞳にまた涙の膜が張る
「~~~っ!
なんだよ、イケメンかよこのやろおー!」
僕は泣きだしながら隆幸に抱き着く
勢いが良すぎたせいか、ベッドに隆幸を押し倒した格好になるのだが、今の僕にそんなことを考える余裕はない
「あはは、カッコいいだろ?
そのまま遊上から俺に乗り換えてもいいんだぜ」
「ヤだ、僕遊上くんが好きだもん!」
「即答かよ!」
隆幸のらしくない冗談にまじめに応えると、隆幸が笑う
そして、一呼吸おいてから隆幸は僕を抱きしめながら真面目なトーンで僕に聞く
「…それで、どうしたんだ?
言ってみろ、聞いてやるから」
隆幸の優しい声に、僕は泣きながらこれまでの出来事と気持ちを吐露した
遊上くんと付き合いだしたこと
それ以降、遊上くんの帰りが遅くなったこと
告白した時から今日までずっと遊上くんから好きと言われていないこと
遊上くんとエッチはおろか、キスさえもまだしていないこと
そういえば、手もまだ繋いだことはなかったかな?
それから今日、隆幸を待ってる間に遊上くんと可愛らしい男の子が腕を組んでいたこと
そして今の僕の気持ち
全部、全部
不安や不満、気持ちがぐちゃぐちゃになってることまですべて、洗いざらい隆幸に話した
隆幸に泣きながら全てを話したことで、僕の中でも少し、心の整理がついたかもしれない
この気持ちを言葉にするまではぐちゃぐちゃになっていた心も、少しは落ち着き改めて現状を認識できたような気がする
隆幸は、僕の涙で濡れてつっかえながらの聞きにくかったであろう話も、ゆっくり焦らせずに優しく聞いてくれた
その時の背中をさする優しい手は、僕を落ち着かせてくれるいい温もりになってくれた
隆幸は普段ガサツなところや雑なことが多いが、こういう時はものすごく優しい
もし僕が女の子だったら隆幸を好きになっていたかもしれない…
まぁ、その前に遊上くんを好きになってたりするんだろうけど
………僕は、遊上くんが好きなんだけどなぁ…
そういえば、まだ隆幸をベッドに押し倒したままだったのだった
はたと気づいた僕は起き上がろうと腕に力を入れたのだが、隆幸のホールドが崩れない
疑問に思い、隆幸を見ると何とも言えないような表情をしていた
…最近、この顔を見るようになった気がする
「………なぁーお前さ、なんで遊上のこと好きなの?」
唐突に聞かれたその質問に僕は泣き腫らした重たい瞼でぱちりと瞬く
隆幸の腕にギュッと少しだけ力がこもった
「遊上って遊んでるし、付き合ってるはずのお前差し置いてほかの男としけこんで、好きの一言も言ってやらないサイテーな男じゃん
なんで、そんな奴のこと好きなの?」
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