第4話

ぐすぐすと鼻をすすりながら泣き止んだ僕に、隆幸はタオルを差し出してくれた




「…部活で使ったから汗臭いかもだけど、ないよかマシだろ


顔拭くぞ」




うん、と返事をする前にごしごしと雑に顔をぬぐわれる


隆幸が言ったとおり、タオルは洗剤と一緒に隆幸の汗のにおいがした




「…よし、とりあえずはこれで良いだろ


一応、近くの水道で顔洗ってくか?


それともそのまま寮に戻って下着とかとってくるか?」


「……痛かったけど、ありがと


とりあえず顔洗う…


目ぇ腫れてない?」




僕の質問に隆幸がこちらをしっかりのぞき込み、微妙な顔をする




「ん~…、薄暗いからちょっとわかりにくいけど、ちょっと腫れてるかも?


後、明るいところで見たら目元とか赤くなってるかもな」




そう言って隆幸は僕の頭をくしゃりと撫でた


それが意外と気持ちいい


少し落ち着いた僕は隆幸のタオルを借り、水道で顔を洗う


なるべく目元はしっかり冷やしておいた


少し遅くなってしまったが隆幸は特に文句を言うことなく僕の部屋まで一緒に来てくれた


部屋に入ると、案の定遊上くんは帰って来ておらず、ホッとすると同時に胸がずきずき痛む


手早く共有スペースを片づけてバッグの中身の入れ替えと自分のお風呂セットと歯ブラシ、下着を持ち隆幸の部屋へ行く


ちなみに隆幸のルームメイトは今日友達のところにお泊りするらしいので、部屋では僕と隆幸の2人だけだった


気を使わせてしまったかな…?


隆幸の部屋で、隆幸はベッドに腰掛け、僕はその横にベッドを背もたれにして床に座っていた


ちなみに、自分の部屋の鏡で目元チェックしたときは、少し赤みが残っているくらいだった


まぁ、思いっきり泣いたんだからしょうがないよね…


それに、ここまで付き合ってくれた隆幸にまだ何も言ってないし、事情話した方がいいよね……


僕が意を決して事情を話そうとすると、それを遮るかのように先に隆幸が口火を切った




「………あのさ…


泣いてた理由、話したくないなら話さなくていいんだからな…」


「……隆幸…」


「…まぁ、話さなくても見てたらなんとなくわかるし……」


「え……!」




なになになに!?


僕ってそんなにわかりやすいの?


顔に出てたりするの?


つい、表情に出ているのか確認するために手でペタペタと自分の顔を触っていると、隆幸が笑いだす




「あはは、だから楓は分かりやすいんだよ


表情にも出るけど、行動にも反映されるからな!」


「んぐ……


悪かったね、わかりやすくて!


……じゃぁ、ホントにわかってるか答え合わせしてみる?」




なんでもお見通しみたいに言われて僕はむくれつつもそう挑発してみる


隆幸はそれににやりと笑いながら僕の挑発を受けた




「いいぜ


まず、お前が泣いていた理由だが、それはズバリ遊上 愁のせいだろ?」


「!!


せ、正解…


なんでわかったの?」


「だってお前、放課後ルンルンで帰ったと思ったらすぐに俺んとこくるし、片付けの時、遊上が近くにいたろ?


その後泣いてるとか、遊上以外の原因とか考えられねーだろ」




隆幸の推理に、僕はうぐぐと唸る


どこも間違えていないし、当たってるし、それどころかよく僕のことを観察している


確かに放課後は遊上くんに会えると思ってルンルンだったし、遊上くんが寮に居なかったから隆幸のことろに行ったのだし、僕が泣いていたのも理由は遊上くんだ

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