第3話
もやもやした気持ちを抱えつつ、隆幸が来るのを待っていた
バスケ部の片づけが終わって、着替えるために部室に行った隆幸を見送った後、気になって後ろを見てみたら、もうそこに遊上くんは居なかった
そのことに少しホッとしつつも、心の中はぐちゃぐちゃで不安だった
確かに、告白したのは僕からで、好きになったのもきっと僕が先
……あぁ、でも
遊上くんは本当に僕のことが好きなのかな…?
告白した時付き合うことは了承してくれたけれども、その時遊上くんは僕に好きだとは言ってくれていないし、それからも1度たりとも遊上くんから好きだと言われたことはない
それにさっきもセフレと思われる子と一緒に、腕を組んでいた…
僕はエッチどころか、キスさえもしていないのにきっと彼とは……
ジワリと目頭が熱くなってくる
認めたくないけど、もしかして好きなのは僕だけで、隆幸が言ったとおり僕は遊上くんに遊ばれていただけなのかもしれない…
ずっと否定し続けていたことが、やはり真実なのかもしれないと思うと、もうどうしようもなく泣き出したくなる
ジワリとにじんだ涙を袖でごしごしこすっていると、その腕を大きな手につかまれた
「…楓、大丈夫か?」
「…隆幸……」
そこには部活終わりで少し汗のにおいのする隆幸がいた
遊上くんかもしれないなどと少しでも思い上がってしまった自分が恥ずかしい
遊上くんは僕が泣いていたとしてもきっと、隆幸みたいに走って来てくれたりはしないだろう…
自分で想像しただけなのに、もしそうなったとき、きっとそうなるのだろうと安易に想像できてしまって、更に胸が痛くなる
そのせいで更に涙がこみあげてきて、僕はつい、泣き出してしまった
「か、楓!?
どうした、どこか痛いのか?」
「ぅう…、たかゆきぃ~」
泣き出した僕に隆幸はおろおろしつつも、そっと抱きしめてくれた
その温もりが少し心地よくて、僕は泣きながら隆幸に縋りつく
苦しくて、胸が張り裂けそうで、気付かないふりをしていたものを見せつけられて
この感情をどうすればいいのか、わからない
とめどなくあふれる涙を抑えようと、漏れる嗚咽を抑えようとしても、それらはなかなか止まってくれない
あぁ、隆幸は僕が突然泣き出して、困ってるんだろうなぁ…
でもごめん、今の僕にはこの涙を止める術を持たないんだ
この持て余した感情を制御しきれないんだ
「……ほら、ゆっくり深呼吸しろ
焦らなくていいから、ゆっくりでいいから落ち着け
…んで、今日は俺の部屋に泊まるか?」
隆幸の優しい言葉に有り難く、僕は小さくうなずく
今、こんなぐちゃぐちゃの僕のままで遊上くんと同じ部屋に帰れるような度胸はない
きっと今遊上くんと鉢合わせてしまったら、僕はひどい言葉を彼に投げつけてしまうかもしれない
それだけは嫌だ
それならいっそ、彼に合わない方が、隆幸の部屋に泊めてもらう方がいいに決まっている
僕が泣きやむまでのしばらくの間、隆幸はずっと僕を抱きしめ、頭や背中を撫でてくれていた
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