第12話

放課後、いつもの教室で潤は緊張を紛らわすかのように舌で唇を濡らした




「……俺さ、お前のこと、好きなんだ…」




いつもとは違う、少し震えた声に俺はやはりたじろぐ


が、いつも通り笑って返す




「え?


俺もお前、好きだよ


もー何年の付き合いだと思ってんだよ!


嫌いならこんなに長く一緒になんて居られねーよ」




真剣な空気を笑い飛ばすようにそう言った俺とは反対に、潤は視線をさまよわせつつも想いの丈を告げる




「……いや、そうじゃなくてさ…


俺、幼なじみとしてじゃなくて、恋愛感情として、お前のこと好きなんだ…」


「は……?」




真面目な潤の告白に、俺の思考は固まる


恋愛感情……?


固まった俺を真摯に見つめながら、潤は言葉を重ねる




「……大輔が、俺のことそういう意味で思ってくれてないって知ってるけど、でも…


少しでも俺のこと意識して欲しくて…」


「え……


いやいやいや!


男同士なんて、フツーじゃねーだろ」




潤の突然の告白に驚き慌てふためいた俺は、とっさにそれを否定してしまった


そして、潤の言葉を遮る際に、顔を横に逸らしてしまったせいで潤の表情を窺い知ることができなかった


潤が俺に恋愛感情を向けていただなんて…


お願いだから、ただの冗談だって言ってくれよ…


そんな、祈りにも似たような感情を胸に抱きつつ、潤の次の言葉を待つ


混乱しつつ潤の言葉を待つその時間は、何よりも永く感じた


が、その沈黙は潤によって破られる




「………そうだよな…


悪い、忘れてくれ…」




そう言って潤は自分の鞄を引っ掴み、慌ただしく教室を出て行ってしまった


教室に1人残された俺は、どうすることも出来ず佇むことしか出来なかった






薄ぼんやりと開けた目には、いつもの天井が映っていた


また、あの時の夢を見ていたようだ




「んぁあ、いてぇ……」




昨日はやはり調子に乗ってお酒を飲みすぎてしまったようだ


いつも通り二日酔いの頭痛と一緒に胸が痛い気もするが、それはやはり気のせいなのだ


目に染みる朝日に顔をしかめながらしばしの間布団の中でごろごろする


今日は特に予定もないはずだ


まぁ、1週間分の食料や日用品の買い出しなどがあるが、それは夕方からでも間に合うはずだし…


あ、そういえば、昨日飲みに行く前に本を読みふけってしまって本棚の整理が途中で終わってしまっていたのだった


そろそろ新刊が出るはずだから本棚を空けなければならないのだが、今現在部屋の本棚はもう満杯だったはずだ


来月には3冊買う予定だが、書店の中を廻っていたらついつい買う予定のなかった本まで買ってしまうので、少なくとも本棚の1段分は空けとかなればならない


…しょうがない、実家の元自分の部屋を書庫代わりにしているから今日中にあそこに持って行っとくか…


とりあえずの予定を立てた俺は布団から這い出て顔を洗い、歯磨きをする


ついでに母親に今日、本を置きに帰ると連絡を入れておく


連絡を入れずにふらりと実家に帰るとたまに怒られたりするので、連絡は必ず入れるようにしている

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