第11話
「ほーう、じゃぁ、後でピーマンの肉詰め頼もーぜ
俺にキュウリ食わせたんだから、潤もピーマン食えよ!」
「…はいはい、わかったよ」
俺だけ苦手なもん食わさせられるなんて、不公平だからな
なんてぼやきつつシーザーサラダを食べる
タレにしっかり絡めたおかげか、今日のキュウリはいつもより青臭さが気にならなかった気がした
その後も他愛ない話をしつつ、お酒と料理を胃の中に収めていく
お腹も満ちて、いい感じに酔っぱらい、ひとしきり笑った後にふとスマホを見やると、そろそろ終電の時間が近づいてきていた
楽しい時間というものは、なぜこうもすぐに終わってしまうのだろうか?
少し寂しく思いつつも、俺はのどを震わせた
「潤ー、そろそろ終電来るから、俺帰らなきゃ」
「ん、あと何分?」
「電車が後20分くらいで来るから、もーちょいしたら出ないと間に合わない感じー」
「じゃぁ、もう店も出た方がいいかもな…」
「おぅ、わりぃな
また今度一緒に飲もうぜ」
「あぁ、また一緒に飲もう」
次の約束をして俺たちは立ち上がる
お会計はしっかり折半にし、お店の前で別れるのかと思いきや、潤が駅まで見送りに来てくれるというので、その言葉に甘えてみた
久しぶりの友人との飲みで楽しくて、少し別れがたかったのは内緒だ
駅までの道中も酔っ払いよろしく楽しくお喋りして、駅の改札口まで見送りに来てくれた潤と別れた
「またなー、次会うときはプライベートじゃなくて仕事かもだけど!」
「そうかもな
気をつけて帰れよー」
改札口で大きく手を振って潤と別れた
まるで学生の頃に戻ったような気がして、楽しかった
まぁ、いい歳こいた大人が何してんだよって話でもあるのだが…
駅のホームに帰宅用の電車が滑り込んできたので、それに乗り込む
終電だと乗車客もまばらで、適当な席に座る
お腹も満腹で、お酒も飲んだ後に乗る電車は心地よい眠気に誘われるため、乗り過ごしてしまわないようスマホの暇つぶしのゲームで遊ぶ
少しうたた寝をしてしまいそうだったが、何とか眠気を乗り切って自宅の最寄り駅で電車を降りる
自宅までのんびりと歩きながら、今日の潤との飲みを思い返す
今日は本当に楽しかった
苦手なキュウリも食わされたけど…
潤は平気な顔でピーマンの肉詰め食べてたし、本当に苦手意識を克服してしまっていたようだった
何となく悔しい…
…でも、高校卒業後の潤の話も聞けたし、今までの空白が埋まったかのように思えた
まぁ、それももしかしたら俺だけの思い違いかもしれないのだけれど…
……いや、そんなん悲しすぎるから俺の思い違いとかじゃないって信じてる…
信じていいんだよな…?
だから、次飲む約束もしたんだよな…?
……きっとそうだ、そうに違いない
それに俺と一緒にいるのが嫌なら向こうから飲むの誘ったりしないし、駅の開札までわざわざ見送りに来たりしないよな
あぁ、また潤と一緒に飲みたいな…
いろいろと考え込んでいたら自宅へと帰り着いていた
室内の空気の入れ替えと歯磨きだけして、この日は寝た
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