第5話

「あー…、やっぱあの時俺、めっちゃガン見されてましたよね?


最初は気のせいかなーとか、仕事熱心だなーて思ってたんすけど、富樫部長や飯島課長が発言されてる間も俺の方ばっかり見てるんで、ちょっとやりにくかったっすね」


「あはは、お前が冷や汗かいてるの見て、途中でぶっ飛んだりしないかこっちも冷や冷やしたよ


よく頑張ったな、お疲れ様」


「!


あ、ありがとうございます!」




思ってもいないところから褒められて、少しうれしくなる


ちらりと運転中に飯島課長の顔を盗み見ると、どうやらその言葉に嘘はなさそうだ


ぐっと握りたくなるこぶしを押さえつつ、運転に集中する


が、やはり気になるものは気になるので、唇をなめて濡らし、思い切って訪ねてみる




「…今回のプレゼン、とれますかねぇ?」


「ん~、富樫部長の反応を見てるといける気がするんだよねー


内容もよかったし、受け答えもちゃんとできてた


今の池中のベストを尽くしたと思うよ」


「…あざっす」




にやけそうになる頬を気力で抑え、ポーカーフェイスを気取る


こ、これくらいでご機嫌になるようじゃ、まだまだお子様だ


そう言い聞かせてポーカーフェイスを貫いているはずなのに、助手席の飯島課長の視線が痛い




「…別にこういう時は素直に喜んだっていいんだぞ


上司の誉め言葉は素直に受け取っとけー」


「う…、あざっす…」




どうやら俺の心中は飯島課長に筒抜けだったようだ


そのことが少し、悔しくもあるが、やはり仕事で褒められるのはとてもうれしい


その後俺は会社まで少し上機嫌で運転した


その間飯島課長の生暖かい視線は気まずくもあったが…




「ただいま戻りました」


「お疲れ様でーす」




会社に帰り着き、営業部に戻る


すぐに自分のパソコンを立ち上げて、メールとFAXの確認をしたら今日もプレゼンの報告書の作成をする


プレゼン先、プレゼンした者、プレゼンした内容と流れ、質疑応答と相手先の要望、最後に相手側の反応


報告書の定型文に当てはめてなるべくわかりやすいように、まとめていく


これは今後、自分の後輩たちがプレゼンの流れなどを理解するための資料の1つになるはずなのだ


上司への報告書でもあるが、後輩たちへの指導書にもなる


そこらへんも頭に入れつつ、どういう言葉だとわかりやすいのか考えながら打ち込む


いろいろ考えつつ、今日のことを思い出しつつ報告書の作成確認添削をしていると、どうやら定時になっていたようだ


ちらほら同僚たちが帰宅していくのを横目に、出来た報告書を持って飯島課長へ提出する




「今日の郷上コーポレーションさんへのプレゼン報告書です、よろしくお願いします」


「うん、確かに受け取りました


もう定時過ぎたし、今日は帰っていいよ


お疲れ様」


「お疲れ様でした


お先失礼します」




ぺこりと頭を下げて自分のデスクに戻る


報告書がちゃんと保存されているのを確認して、今日の日報を書き込み保存して、パソコンの電源を落とす


これで、今日の業務は終わりだ


荷物を確認して席を立つ


営業部を出る前にまたお疲れさまでしたと声掛けして出る


今日の晩御飯はどうしようか?

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