第4話
もにょもにょと言い訳を述べながらも私用のスマホを取り出す
そういえば、専門学生の頃、携帯を壊して番号を変えてしまったから、潤は今の番号を知らないはずなのだ
俺が私用のスマホを出したのを見て、潤もあわててポケットからスマホを出す
スマホだと、昔みたいに赤外線で連絡先交換とかできないから、少し不便だよな
「…とりあえず、俺が番号言うからかけてくれるか?
そしたら登録するから」
「あ、ああ!
じゃぁ、よろしく」
「ん、俺の番号は080-XXXX-XXXXだ」
「おっけ、ちょっとかけるな」
潤がスマホを操作すると、すぐに俺のスマホが着信を知らせるために震えだす
そのスマホの画面を潤に見せながら一応確認する
「これがお前の番号でいいんだよな?」
「ああ
いつの間にかお前の番号が変わってたから、びっくりしたよ
番号変えたっていう連絡もないから、嫌われてんのかなって…」
「わ、わりぃ!
俺、専門学生の頃に前の携帯、水没して壊れちまって…
データ取り出そうにも完全にいかれてたからそれもできなくてさ
んで、番号変えたのは新しく契約しなおした方が安くなるって言われてさー、何も考えずに番号も変えちまったんだよな…
さすがに入れてたやつ全員の番号覚えてなかったし、連絡できなくて悪かったな」
あの時の自分の早計さにはほとほと呆れかえるしかない、自分のことだけど
データが取り出せないのに、自分の番号も変えてしまえばどれだけ連絡待ちしても、誰からもかかってくるはずがないのだ
おかげで、中学、高校時代の友人たちの連絡先はほぼほぼ入っていないのだ
潤もその例にもれず、連絡先が分からないままだった
まぁ、潤の場合は家を知っているから会いに行って事情を話せばよかっただけなのだけれども、それをしなかったのはただ会いに行ってもいいのかわからなかったからだ
俺が潤の告白を断ってしまってから、潤は俺を避けるようになっていた
だから、自分から潤のところに行って、断られるのが怖くてたまらなかったのだ
そんな風に怖気づいた俺のせいで、潤にそんな風に思わせていたとは思わず、言い訳を捲し立ててしまった
そんな俺の内心に気付いているのか、潤は苦笑した
「…お前、ホントそういうとこあるよな
今度からはスマホ壊さないよう気を付けとけよー」
「今度は壊さねーし!」
潤の軽口に笑って返す
あぁ、高校の告白の時より前に戻ったみたいだ
潤に避けられたからと言って、俺からも避けるなんてことせずにいつも通り接していればよかった…
そんなことを思っていると、飯島課長がお手洗いから戻ってきた
「悪い、待たせたな」
「いいえ、大丈夫です」
「…じゃぁ、私はこれで失礼します」
「本日はありがとうございました」
飯島課長の言葉に乗っかり、俺も潤へとぺこりと頭を下げて郷上コーポレーションを後にする
車に乗って時刻を確認すると、15時半を回ったころだった
思っていたよりも時間がかかっていたようだ
お互いシートベルトをしているのを確認してからエンジンをかけ、車を出す
このまままっすぐ会社に戻れば16時過ぎには戻れるだろうと何となく考えていると、不意に横から爆弾が落とされた
「…池中、お前あんなイケメンな幼なじみがいたんだな
プレゼン中、すっげーガン見されてたなー」
はははははと飯島課長が笑う
やはり、潤が俺を見続けていると思ったのは俺だけではなかったようだ
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