第56話

ティオナットが帰ってから2時間ほど部屋の中で寛いでいると、部屋のインターホンが鳴った


ティオナットはそれがルーカスである事を確認してから玄関の錠を開けて部屋の中に招き入れる




「お邪魔しまーす……


……お、意外と綺麗じゃん


これじゃ掃除はいらねぇよな」




ルーカスのホッとしたような独り言を耳ざとく聞いていたティオナットは訂正を入れてやる




「何言ってんの?


俺に飯作ってその後掃除するんだよ」


「は!?


これ以上どこ掃除すりゃ良いんだよ!?」


「煩い


良いから早くご飯、お腹すいた」




ルーカスのツッコミは煩いの1言で切り伏せるとご飯を要求するティオナット


ルーカス本人が言い出したことながら、教師相手になかなか図々しい奴だ


そんなティオナットの態度にルーカスもつい小さくぼやく




「……自分で作れるならテメェで作れよな…」


「そしたらルーカスとの取引きはオジャンにして良いのか、そうか」


「駄目です、ティオナット様!!


私めにご飯を作らせて下さい!」




ルーカスの小さなぼやきに反応して、言葉を漏らすとルーカスが過剰反応して、その反応にツボったティオナットは小さく吹き出した




「あはは、ほら、食材は冷蔵庫の中にあるから早く作ってよ


2人分作ったら一緒に食べよ


それからまた働いてもらうからさ」




ティオナットは爽やか笑顔で朗らかにそう言うと、ルーカスは微妙な顔をした




「……お前、やっぱり鬼畜だ…」


「フッ……ありがとう、褒め言葉として受け取っておくよ」




ティオナットがそう受け流すと、ルーカスはやはり渋い顔をして小さく舌打ちをした


そんなルーカスを見て、ティオナットがいい奴隷を手に入れられたかもしれないなんて思ったことは内緒だ


それからルーカスは諦めたようで、ため息を吐いてから腕捲りをしてキッチンへと入っていった


その間、ティオナットはソファにゴロンと横になってグータラしながらご飯を待っていた


こんな風に自分の家で誰かにご飯を作ってもらうなどと、いつ以来だろうか


ティオナットはそんなとりとめのないことに思考を没しながらそのまま30分くらい待っていると、フライパンを持ってルーカスがこちらに来た


だからティオナットは起き上がり、ソファの上に座り直す


ルーカスが作ったのは炒飯だった


なべすけをボックスの中から取り出して机の上に置くと、ルーカスはその上にフライパンを乗せる


そしてまたキッチンに戻ると2人分の皿とスプーンを持ってきた


なんだかんだ言いつつ、ちゃっかり自分の分も作っていたようだ


それにちょっと心の中で笑いつつ、2人で食べた


久しぶりに誰かに作ってもらったからかはわからないが、ルーカスのご飯は意外と美味しかった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る