ティオナットの部屋

第55話

とりあえず同行の許可が下りたおかげか、上機嫌のフレッドはよくわからないことを言い出す




「なぁなぁ、ティオナットー


俺さ、ティオナットの部屋に行った事ないよなー?」


「は?


何、急に?


うざい


呼んでないから当たり前じゃん、馬鹿なの?」




フレッドへ返事をするだけだが、とても毒の多いティオナット


それに半分涙目になりつつもめげないフレッド


とても心臓が強い、めげない男の子です




「あ、いや、だからさ……っ、


俺、ティオナットの部屋に行ってみたい!」


「ヤだ


来んな」




勇気を振り絞って進言してみたフレッド


だがしかし、現実(というよりも、ティオナット)は非情であった


ティオナットにあっさり、バッサリ切り捨てられたフレッド、いと哀れなり


それでもめげないフレッドはルーカスのことを持ち出しながらティオナットににじり寄る




「何でー!?


センセーには良いって言ったじゃん!!」


「煩い、近寄るな


あれはしょうがなく、だ


ルーカスの場合は俺に得があるが、お前の場合はどうだ?


煩くて面倒なだけで何の得にもならない


寧ろ、俺にとってマイナスにしかならないじゃないか


だからお前なんか呼ばない」




近付いてきたフレッドを華麗に避けて、淡々と理由を述べるティオナット


フレッドは納得のいかない顔をしていたが、フレッドを知る者が聞けば、納得の理由だろう




「んな事ないし!


俺、煩くないもんね!!」


「いや、現在進行形でうざいんですけど


つーか、もう寮に着いたし、じゃぁね」




それだけ言い残してティオナットは、フレッドが後ろでわーぎゃー言っていたのを素知らぬふりで魔方陣の中に入り、置いて帰った


説得するのもめんどくさいし、おそらくあれは説得しても聞かない


だからこその強行突破ともいえるだろう


部屋に着いたティオナットは、無意識にため息を溢す


そして1言




「………疲れた」




そしてその頃、ティオナットが疲れた主な要因であるフレッドはというと……




「ああー!!!


置いて行かれた!!」


「……フレッドくん、だっけー?


煩いよぉー、寮内で騒ぐならそのお口、縫っちゃおーかぁ?」




ティオナットに置いて行かれた悲しさを嘆いていると、背後から寮長のミシェルが音もなく表れて綺麗な笑顔で黒い提案をしてくれていた


これにより、フレッドが静かになったのは言うまでもないだろう

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