第47話

「……ていう事があって…」




そこで涙ながらに語っていたザンは漸く言葉を止めた


すべてを聞き終わったティオナットは、ザンに率直な感想を述べる




「…で?


やっと終わったの?


話し長い、長すぎ


もう帰って良い?」


「えぇ!?


ほ、他には?


他に何も思わなかったの!?」




感想ともいえない感想に食付きの良いザン、ティオナットはそんな彼を見て大きなため息を溢した




「…他?


苛ついた


確かに好きだった奴が幼い頃に亡くなったっていうのは同情してやるよ


うん、ジェラルドは可哀想だな


…でも、だから何だ?


お前はそれを俺に話して、何て言って欲しかったわけ?


“可哀想なジェラルドくん、俺への態度も仕方ないよね” ってか?


ふざけんじゃねぇよ


俺はそのアレックスという奴とは違う


確かに忌み子だって事は、この髪と目の色が一緒だろうが、ただそれだけだ


俺はアレックスじゃない


それに、ジェラルドが良く “家に引き籠ってろ” 的な事を言っていた意味がやっと分かった


あれ、俺の為じゃなく “自分の為” だろ」


「違う!!!」




突然、いつもはそこまで強い言葉は使わず、オロオロしている事の多いザンが勢いよく立ち上がりはっきりと真っ向からティオナットの言葉を否定した


その反応にティオナットは少しだけびっくりした


が、それだけだ


ザンにいきなり強く否定されて驚きを、一旦は顔に出してしまったが直ぐに冷たい表情に戻る




「ジェラルドは…っ、ちゃんとティオナットくんの事を思って言ってた!


家に引き籠ってたら殺される心配なんてないって!!」


「………何それ、うざ」


「っ!!!」




ティオナットの絶対零度の瞳と声に、ザンは竦み上がり、声が消える


気のせいか、周りの温度もグンっと下がっていて薄ら寒い




「お前らその他大勢が、特異少数の俺ら忌み子の何を知ってるつもりなのか知らねぇけどさ?


何様のつもりなの、お前ら


それじゃぁ、忌み子だから外に出て来んなって差別してんのと同じだろうが


そんで、俺の場合が良い例だ


反発してきた奴には権力と力で捩じ伏せて、それが “俺の為” ?


ふざけんじゃねぇよ」


「……………ぁ」




ティオナットの怒りに満ち満ちたその言葉にザンは、自分達のやっていた事に、ようやっと思い至った様だ


自分たちはそうならないようにと、3人で考え抜いた末の行動が、まさかそうだったとは露ほども考えてはいなかったのだ


ティオナットのため息と共に戻った温度とザンの声


青い顔のザンはふらりとその場に座り込んだ

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