第48話

腰が抜けたように座り込んでいたザンは、頭を抱え込み泣き出してしまった




「ぼ、僕らはそんなつもりは……」




そんな事を言っているザンにティオナットの美姫の唇からため息がこぼれる




「…例えそんなつもりがなくてもお前らがやってたことはそういうことだろ


あーもー、クソ面倒くせぇなぁ


次から気を付ければ良いんじゃねぇの?」




頭をボリボリ掻きむしりながらとても面倒臭そうに言うティオナット


ティオナットの適当なその言葉にハッと顔を上げるザン


……意外と単純な子なのかもしれない




「そ、そっか…


これから気を付けるよ!


ありがとう、ティオナットくん!!」




涙を乱暴にゴシゴシ袖で擦ってそう言ったザンはそのまま駆け出して行った


ザンが勢いよく駆け出して行ったため、ポツンとその場に取り残されてしまったティオナット


ティオナットはもう1度盛大にため息を吐く


そしてポツリと呟く




「………帰るか…」




その声は些か寂しそうなものだった


ティオナットは呟いた後に言葉通り寮へと歩き出した


その背中は疲れている様にも見えた


…まぁ、それもしょうがないのかもしれない


ただ座っていただけだとしても、興味の欠片もないお涙ちょうだい話を長々と聞かされて、ただ苛ついただけだったのだから


そして何故か凹みまくっていたザンをとりあえず慰めていたら急に元気になって、今度は勝手に何処かへ行ってしまったのだ


これで疲れるなという方が酷だろう


この日はその後何事もなく寮へ帰り着くと、簡単にシャワーで汗を流して、自分で晩御飯を軽く作ったのを食べて、寝た


因みにティオナットに食堂を使う気はあまりない


ティオナットは忌み子であることを気にしていない体ではあるが、その実意外と気にしていたりもする


ただ、ティオナットの場合は外野からいちいちうだうだ言われたくないだけなのだが


翌日、ティオナットは支度して寮を出て教室へと向かっていると、沢山の視線を感じた


恐らく、昨日のジェラルドとの1件のせいもあるのだろう


昨日みたいに陰口や悪口を言っている奴もいたが、他はほぼ遠巻きに見てくるだけだった


思ったよりも少ない陰口に心の中で首を傾げつつ、何もない風を装ってそのまま歩いていくティオナット


教室へ着くと、フレッドが煩かった




「あ!!


ティオナット!


昨日、俺の事置いて帰っただろ!!


酷いじゃんかぁ〜!」


「煩い、近寄るな」




半泣きで抱きついてきたフレッドを足蹴して距離を取るティオナット

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