第46話

「いってぇな!


何だよ!


元はと言えば、引き籠って出てこなかったジェラルドが悪いんだろ!


自分1人だけが悲しんでるなんて思ってんなよ!!」




痛みといろんな感情がぐちゃぐちゃになってこみあげてきた故に涙目でジェラルドを睨むハーパル


ザンはハーパルの言葉に力強く頷く




「そうだよ!


ジェラルドだけが来ないから変にギスギスしちゃったんじゃんか!」




ハーパルとザンの言葉に、ジェラルドはその場で黙りこむ


ザンとハーパルはジェラルドの言葉を待つ為に、無言でジェラルドを睨む様に見ながら待つ


怒っていたジェラルドの表情(カオ)が苦し気に、歪んだ




「……………僕が悪かったよ……ごめん


……でも…っ、僕はもう、どうすれば良いかわからない」




出て来たのは、小さな謝罪と、ジェラルドの今の素直な気持ち


ジェラルドの絞り出されたその声が


どうしたらいいのかわからないと歪むその表情(カオ)が


充血し、今にも涙が零れ落ちそうなほどにうるみきったその瞳が


言葉よりも雄弁にその思いを語っていた


それがジェラルドの総てから伝わって、痛い程に分かるザンとハーパルは、何も言えなかった




「……………まだ、 “アイツ” が居ない事が信じられないんだ………」




ポロリと、日頃は何があっても泣かなかったジェラルドが


この日、アレックスが居なくなってから初めて涙を溢した


因みに、ジェラルドが日頃泣いたりしないのは、ラングフォード家の躾の賜物でもある


“貴族たる者、人前で容易く弱味を見せるな” という教えがあるからだ


ジェラルドの父、ジェルヴェ曰く、 “泣く事も弱味を見せる事となる”


“だから、次期当主となるお前は人前で容易く泣いてはいかん”


そう、今よりももっと幼い頃から耳にタコが出来る程聞かされており、実践し忠実に守ってきたジェラルド


そのことを一応は知っていたザンとハーパルは彼の瞳から零れ落ちた涙に驚く


が、これはしょうがないものと2人も納得する


ザンとハーパルにとっては親友の1人が居なくなったのだが


ジェラルドにとっては唯一の想い人が突然居なくなってしまったのだ


これで泣くなと言うのが酷であり、泣かない者などもう人間ではない


ザンとハーパルは顔を見合わせ、ジェラルドに近寄り、3人で抱き合った


それにより、人肌のぬくもりに安堵したのかジェラルドはより一層、酷く泣いた




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