第41話
そんなジェラルドに神父たちが気付いたときにはもう遅かった
ザンとハーパルは神父にすがりついたままずっと泣いていたため、神父はずっとそんな2人を慰め、宥めていた
だから、長い間気付かなかった
そこからジェラルドがいなくなっていた事に
ザンとハーパルが神父にすがりついて泣いていた頃、ジェラルドは足を縺れさせながらも走っていた
走って、走って、やっと辿り着いたのは、ラングフォード家
ジェラルドは、自分の家へと帰ってきていたのだ
そしてジェラルドはおかえりなさいませと品よく挨拶をしてくるメイド達をシカトして、父の部屋へと駆け込んだ
「父上!!
あいつに……
アレックスに何をしたのですか!?」
父の部屋に駆け込むなりそう叫んだジェラルド
この頃は英才教育のおかげで普通に敬語を使えていたが、性格は幼い頃からすでにもうこれで、どのような英才教育を施そうともどうにも出来なかった
ジェラルドの父、ジェルヴェ・ラングフォードは書類から目を離さず、ジェラルドを窘める
「……ジェラルド、私の部屋へ入って来る際はきちんとノックをして名乗り、私からの入室の許可が下りてから入ってきなさいと言ったでしょう
それに、人聞きの悪い事を親に向かって言わない」
「父上!
返事になっておりません!
ぼ…、私はアレックスの事を聞いているのです!」
ここで、漸くジェルヴェは書類から顔を上げた
ジェルヴェの冷たい瞳がまだ幼いジェラルドを射抜く
それに小さく、だが鋭く息を飲み込んだジェラルド
「五月蝿いぞ、ジェラルド
さっきの態度のお前には教えてやれんな」
「っ!!!
……父上、アレックスについて何かご存知ありませんか?」
ジェルヴェの言葉にジェラルドは息を詰め、言葉に気を付けて問い直す
必死に忌み子の居場所を知ろうと聞いてくるジェラルドを見て、ジェルヴェの口元がイビツに歪む
「………アレックス、と言ったか
確か、それはお前の近くによく居た忌み子の名前だったな…
……ふんっ、 “私は” 知らんな」
意味深にそう言ったジェルヴェ
幼いジェラルドは言葉の本当の意味まで分からず、幼いが故にその言葉をそのまま字面通りに信じてしまう
「……そう、ですか…
…お忙しい中、ありがとうございました」
ジェルヴェという唯一の手掛かりが消えてしまったことに意気消沈したまま、ジェラルドはジェルヴェの部屋から出て行った
そのいつもより小さくなった後ろ姿を見て、閉まったままの扉を見詰め、ジェルヴェは小さく言葉を洩らした
「……お前には悪いが、お前の恋路を邪魔させて貰ったよ
済まないね…」
その言葉は誰の耳に入る事もなく、泡沫の泡となって消えた
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