入寮

第16話

ティオナットは理事長室を出た後、地図のおかげで迷わずに寮に来れた


この学校の所有面積はとても広かった


流石は国立校 と言ったところか


まぁ、その半分程が演習場とグラウンドで占められていたのだが


貴族や王族までもが通う事となる学校なのだから、きっとそれ相応なのだろう、多分


ティオナットは寮へと入る


寮の1階は広く、ホテルのロビーの様だった


寮に入って右の5m程先に扉がある


その扉のプレートには 寮長室 と書いてあった


ティオナットは寮長室へ真っ直ぐ行き、インターホンを鳴らした


ちょっと待ってみたが誰も出て来ないので、もう1回押してみる


もうちょっと待ってみたらガチャリと扉が開いた


出てきたのは、15歳にしては “些か” 身長の低いティオナットより10センチ程だろうか、少し背の高い人だった


手にはパフェ


口元にはクリーム


眠そうに目尻の垂れた薄茶色の瞳


寝癖なのか天然なのか分からないが跳ねたハニーブラウンの髪


血色と貌の良い唇と、小振りだが綺麗な鼻


華奢な手足に身体


とても可愛らしいが、彼は歴とした男だ


彼は不思議そうにティオナットを見詰め、その美姫の口を開く




「………なーに?


てゆーかきみ誰?」




コテン、と首を傾げる彼


ティオナットは不覚にも可愛いなんて思ってしまった事が、これは誰にも内緒だ




「この度、1年Sクラスに転入して来ました、ティオナット・ブリクストです


今日から入寮するので鍵を貰いに来ました」




そう言うと、いくらか間を空けて、彼は何か合点がいったのか自己紹介を始めた




「……………僕はミシェル・アンクティル


………ここの5年生で寮長やってます


鍵だったよねー、……ちょっと待ってて」




ふわり とそう言って、彼は寮長室の中へ引き返す


どうやら鍵をとって来てくれるらしい


ティオナットは些か不安に思いながらも言われた通り、そこで待つ


そして待つ事約10分後、ミシェルはパフェでなく鍵を持って出てきた


先輩相手に失礼かもしれないが、ティオナットはその事に小さく安堵する

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