第11話
雷帝の独り言などいざ知らず、転移で自室へと帰ってきたティオナットは、蒼風の氷帝となってからずっと住んでいる部屋を見渡した
これでこの部屋とも一時はお別れか と、染々と思ったのも束の間
ティオナットは必要最低限のものを無造作にボックスの中へと入れていく
全寮制ということは、学校側が寮を提供しているので家具家電は粗方備え付けてあるだろう というティオナットの憶測で判断して荷造りを進める
まぁ、他に足りない物があれば転移で戻って来ても良いし、日頃ギルドの依頼を細々と片付けていたので、世間一般で言う処のお金持ちであるのだから街で買えば良いとも思っていた
そんないい加減な荷造りを半刻もせずに終えて、ティオナットは部屋のベッドへ倒れ込んだ
そしてこれからの学園生活に思いを馳せ、ため息を吐くのだった
ティオナットは忌み子だ
雷帝はティオナットを拾った時にこのノルスーノ王国の国王に、
忌み子への差別や虐めなどをする事を堅く禁ずると誓わせ、王国中にお触れを出させたのだ
それも、15年も昔の話しなのだが、そんな言葉1つで世の中が直ぐに変えられる様なものではなく、
今でも忌み子のティオナットが髪と目の色をさらしたまま外を歩けば周りの人達はヒソヒソと、
もしくは本人に聞こえる様に嫌悪感を表に出した言葉が囁かれ、投げ付けられる
小さい頃はそれがとてつもない苦痛で外へ出ない様な子供だったが、今ではそんな事気にも留めてはいない
帝達のおかげで例え忌み子だったとしても、普通に接してくれる人がいると知ったから
雷帝との修行のおかげで、己れだけでなく他人まで護れる力を得たから
雷帝が、そんなこと気にならないほどの深い愛情を注いでくれたから
そんな些細な事、気にしないようになった
だが、これからはずっと学園の中で過ごさねばならない
例えティオナット本人が気にしていなくとも、きっと差別意識を持っている奴は沢山いるし、そんな奴等と少なくとも5年間は付き合わなければいけないのだ
それを考えると憂鬱だった
もしもムカついて殺してしまったら、なんて考えたらため息しか出ないのだ
「嗚呼、憂鬱だ…」
ティオナットはそう呟いて瞼を下ろし、意識をシャットアウトした
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