第10話

雷帝は机の上の書類を掻き分けながら何かを探していた


その為合わない雷帝とティオナットの視線


書類整理しとけば良いのに と常日頃から思ってはいるが口にしないティオナット


これも、馬の耳に念仏 と諦めている




「学校はなー、お前も知ってるぞ


あそこ、えーっと国立の…」




学校の名前が出てこないみたいだったので、その言葉尻を取る




「ノルスーノ学園?」


「そーそ、それ!


ノルスーノ学園!


そこさ、土帝の息子さんが理事長やってんだよね、ほらニコラス・スオーロくん、彼の事覚えてるでしょ?」




そこでやっと雷帝とティオナットの視線が合った




「……知ってるけど…良いの?


そんな勝手に話し進めて」




率直に疑問を述べるティオナットに対し、雷帝はへらっと笑い再び口を開く




「だいじょぶ、大丈夫


一応ニコラスくんにはもう話し通してあるし、明日の朝荷物持って理事長室まで行けば問題ないよ」


「………荷物?」


「え?


だって、あそこの学園、全寮制じゃん」




………流石にイラッとした


本人に何の相談もないし、全寮制だなどとあっけらかんに言い放った自分の父、雷帝に




「……あっそ…


話しそれだけなら帰って良い?


これから荷造りするから」


「あっ、うん


明日部屋に行くからそっから転移で行くよ」


「分かった


じゃぁね」




必要最低限の事項のみ確認した後、直ぐに自室へと転移したティオナット


再び1人になった部屋で雷帝は小さく不満そうに独り言を呟いた




「……昔ならもっと驚いたりなんだり反応してて可愛かったのになぁ……


今じゃ眉1つ動かさなくなっちゃったし…


全く誰に似たのかなぁ…?」




きっと第三者がこれまでのやり取りを見て、この独り言を聞いたのなら、ほぼ全員がこう応える(もしくはツッコんでいた)だろう


お前に似たんだろ と


この親にしてこの子あり といった処だろうか


雷帝の独り言は誰の耳にも届かず、床に墜ちて 消えた

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