第7話

自分でも何をバカなことをしているのだか と、心の中で思っていたりするのだが、このシルバーウルフなら言葉の意味を理解してくれるのではないかと思っていたりもした


そして、雷帝のその言葉が通じたのか、シルバーウルフは剥き出しにしていた牙を収めて、横に退いてくれた


そのことにまた驚きながらも、ゆっくり忌み子に近付き、静かに腰を下ろして小さな生まれたばかりの忌み子を抱き上げた


そこで雷帝はやっと気付く、この赤子の髪色が黒で棄てられた忌み子だということを


そして理解する


雷帝が見たあの光は忌み子をここへ送った時の強制転移後の光だったのだと


それに気付いて、雷帝の顔に苦味が含まれる


こんな幼い、生まれたばかりの赤子を、我が子を棄てる親が、大人がいることに、嫌気がさしたのだ




「………どうしてこんなにも身勝手な事しか出来ないかな…?」




雷帝の悲しみに溢れた小さな呟きは、此処にいた寝ている忌み子と、シルバーウルフの耳にしか入らなかった


眉根を寄せ、辛そうだった雷帝だが1つため息を吐いて、何かを頭の中から追い出すかの様に頭を振る




「………俺が…


俺がお前を1人前の大人に育ててやるからな…!」




忌み子へ誓う様にそう呟いた雷帝


次いで、シルバーウルフを見て喋りかける




「……コイツのことは…お前も気になるよな…


……一緒に来るか…?」




雷帝とシルバーウルフは数瞬の間見詰めあい、シルバーウルフは1つ大きく遠吠えすると、クルリと振り返り走って行ってしまった


それをぼんやりと見詰め、やはりあのシルバーウルフには言葉が通じていたのだと感慨に耽る


が、直ぐに意識が浮上して忌み子をしっかり抱いている事を確認した雷帝は、己が勤めているギルドへと転移した


転移の淡い光と共に、魔の森に人は居なくなった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る