第56話

そして、神華のその想いから五つ神である雷龍たちが生まれた


ボクの中の何が影響して、彼らが形創られたのか、それをボクは知らない


五つ神である彼らのことだけは、無意識に創ってしまったから


そう、五つ神だけは無意識で創ってしまったが、他の人間、動物、植物たちは、ボクがどんなモノでどうあって欲しいのか意識して創ったのだ


特に、人間に関しては細かいところまで意識して、創り上げた


今までのボクのような思いをしないために


髪と目は黒以外にカラフルに


皆と違うからと言って無視したりいじめたりしないように


愛されたいと、人のぬくもりに飢えないように


人を愛し、慈しめるように


他者を嫌い、排斥してしまわないように


困っている人がいれば手を差し伸べられるように


人を殺したいと思わないように


人を恨んだりしないように


他者を尊重し、愛し合えるように


人同士、争わないように


無駄な殺生をしないように


人を傷つけないように


とりあえず、人間の醜いところすべてなくなるように…


ボクは願い、創り上げた


最初はそれで良かった


総て、上手くいっていた


いじめも争いも、戦争だってなくて、平和な世界だった


でも、やはり、人間というものはどこまでいっても人間で


こんなはずはなかったのに、人間は代を経るごとにいつしか他人を羨み、妬み、嫉み、醜い心を持つようになった


その証明が、あの醜い魔物共だ


地球に居たころと変わらぬ、あの醜い化け物がこの世界で人間を襲うようになった


ただ、地球に居たころと違うことがあるとすれば、この世界では神華以外の皆にもこの魔物が見えているという点だ


突然現れた魔物に、人間たちはただ喰われるのみだった


ボクは、心のどこかでは人間たちの自業自得だと思ってしまっていたのかもしれない


でも、魔物たちは見つけ次第消滅させていた


そして、魔物を消滅させるその時は、やはり人間の恨み辛みのこもった怨念が聞こえる


己が生み出した人間たちがこんな化け物を生んだのだと、ボクは泣きたくなった


このままではいけないと、魔物と人間をどうにかしなければと考えていたその時


雷龍から言われたのだ




化け物をどうにかして欲しい、と




だからボクは決意した


人間に魔法という、魔物という化け物と戦う力を分け与えると同時に、人間の心をまた元に戻そうと


根本的な解決のため、最初の頃のような清らかな心に戻そうと、そうボクは決めたんだ


まぁ、結果だけで言えば、この試みは半分成功して半分は失敗に終わったのだけれども


成功したのは、人間に魔法という力を分け与えること


失敗したのは、人間の心にボクが干渉できなかったこと


もう生まれてきた人間たちはボクの手を離れ、自我を持ち、独立した種へと変貌していたのだ


自我を持つ生き物への干渉は、すでにもうボクには出来ないものだったんだ

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