第53話
それを聞いた直後のことは覚えていないが、翌朝起きたのは自分のベッドだったので、恐らく自力でベッドまで戻ってきたのだと思う
その後、神華はいつもの彼女のところには行けなくなった
あの時の心底嫌だという声が、忘れられず近付くことさえ怖くなっていたのだ
それからまた数年が経ち、神華は小学生になった
神華は小学校でも1人だった
小学校のどの学年、どこのクラスでも銀髪で銀色の目をしたのは神華だけで、他の生徒たちも先生たちも皆、目も髪も黒かった
神華は孤児院だけではなく、学校でも孤立することになる
気味悪がった生徒たちは神華に近寄らずシカトし、先生たちはそんな生徒たちに何を言うでもなく、自分たちまであまりかかわらないように努めていた
まるで、神華という存在が元からそこになかったかのように
神華の小学校での生活は、誰とも話すこともなく6年間が過ぎた
何の思い出にも残らない小学校生活を終えた神華は次に中学生になった
神華の通う中学は、神華が通っていた小学校の他に3校の小学校に通っていた子供たちが入ってくる
中学では、自分以外にも黒じゃない人が居るかもしれないと淡い期待を込めながら登校したが、その期待はすぐに裏切られることとなった
入学式に参加したその時、神華は落胆した
自分以外の皆はまたしても、目も髪も黒かった
銀の目も、銀の髪も、神華1人だけだった
中学校では思春期に入ったばかりの子供たちが多いわけで、神華を遠巻きに見てくる子は居ても、誰1人として神華に話しかける子は居なかった
神華はまた中学校でも1人になるのだった
周りが仲のいい友達同士で楽しくお喋りしたりふざけ合ったりしているときに、神華は1人寂しくそれを眺めるか、本を読むかしかなかった
そして神華も中学2年生になり、思春期を迎えていたころ、それを目にするようになり始める
人でも動物でもない、おぞましい何かを
まぁ、そのおぞましい何かと言葉を濁してみたが、それは紛れもない魔物だ
そう、地球にも魔物が居たのだ
ただそれは、神華以外の人間には見えていなかったのだが
それを理解したのは体育の授業中だった
確か、その日は外でソフトボールをしていたはずだ
体育の授業中いつも神華は参加せず、見学している
神華にとっては相も変わらず退屈な日々だったのだが、その日神華は衝撃を受けた
ソフトボールの試合中、突然それは降ってきた
ドシンと落ちてきたそれは朦々と土煙を上げた
突然のことに生徒も先生も驚き、土煙が晴れるまで動かずに様子を見ていると、土煙の中央あたりに居たピッチャーだった女子生徒の悲鳴が聞こえた
土煙が晴れると、悲鳴を上げたピッチャーの女子生徒の二の腕が、何かに食いちぎられたように抉れ、肉の断面を見せ大量出血をしていた
それを見てしまった生徒たちは様々な反応を見せる
悲鳴を上げ腰を抜かしたり、手当てをしようと女子生徒に近寄ったり、突然のグロいそれに胃の中の物を吐き戻したり、逃げ出したり
そんな中、1人離れたところに居た神華はそれを見た
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