第51話

神華と五つ神以外の総てが眠りについたのを確認した神華は、美しく響いていたそれを止める


綺麗なそれが止まった瞬間、しんと周囲だけでなく世界が静まりかえる


まるで、神華が1人で初めてこの世界に降り立った時の様に


そう考えて、すぐに否定が出てくる


何もなかったあの時とは違う


耳を澄ませば、世界中の至るところどこからでも安らかな寝息が聞こえてくる


ちゃんと人が、動物が、植物たちが、息づいている


嗚呼、この世界はちゃんと生きている


それが実感できた神華は五つ神の皆に微笑みかける




「……皆、久しぶり


ボクの来世と来来世である美月ちゃんと信哉君の過去をボクもみたけど、皆は変わらないね


…あぁ、こんなことを言うためにこの場を設けたわけじゃないんだった


ボクは君たちに言わなきゃいけなかったんだ


何故、魔物が生まれたのか


そして、魔物とは一体何なのかを…」




雷龍の厳しい瞳が神華を射抜く


これを話したとき、雷龍は人が好きだからきっと苦悩するのだろう


悲しむのだろう


そんな彼の心情を考えると話し難いのだが、これもしょうがない


事実は捻じ曲げられないし、このままでは自分だけでなく美月も浮かばれないし、信哉はとても幸せになんてなれないだろう


小さくため息を吐き、目を伏せ一息つくと、意を決した神華は真直ぐな瞳で雷龍を見て、話しだす


魔物について


この世界について




「ボクは確かにこの世界を、君たちを、人を、動物を、植物たちを創った


この世界はボクが創った者たちで溢れている


………でもね?


この世界にはボクが創ってないのに、存在している者も居る


それが、魔物なんだ」


「嘘だ!


神華が創っていないのなら存在しないはずだろ!?」




神華が魔物を創っていないと、そう告げると雷龍が目を見開き否定する


だが、それもそのはず


この世界で無から有を創り出すことが出来るのは、創世神である神華のみなのだ


だからこそ、雷龍は魔物なんてものを生み出した神華を危険視し、もう何も創れないようにあの場所へ閉じ込めると言う暴挙に出たのだ


なのに、それなのに、魔物を創ったのが神華ではない?




「………そう、魔物なんて本当はこの世界には存在しないはずだったんだ


じゃぁ、何で魔物が存在しているのかって言うと、あれ実は人間の悪意の塊なんだ」


「………人間の悪意…?」




翠龍が小首を傾げながら鸚鵡返しに尋ねる


頭上にクエスチョンマークが飛んだりと、五つ神全員がピンと来ていないようだった


詳しい説明をしようと神華は言葉を重ねる




「そう、悪意


こいつが嫌いとか、憎い、殺したい


そんな黒い感情と魔力が混ざって、実体なんてなかったはずのものに偽りの身体を持ってしまった、哀れなもの


それが、魔物」

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