第49話

3日前にライたち一家が畑仕事のために畑に居たこと


畑仕事の間、ライは揺り籠にいれて放置されていたこと


畑仕事をしていると、突然化け物が出てきてライを食い殺したこと


そのライを助けるためにアリシアが化け物に向かって行ったが無残に殺されてしまったこと


それに恐怖したマークが、皆にこれを伝えるために町長である自分を訪ねてきたこと


町の若い衆を連れて畑に戻ると、ライの遺体はなく、アリシアの臓物を食われていたこと


その時にはもう化け物はそこに居なかったこと


その後、昨日までのマークの様子


それから化け物は未だ発見、退治されていないこと…


町長は己の知りうるすべてのことの経緯を雷龍に話して聞かせた




「きっと、マークはあれからずっと悔いていたのでしょう…


皆に化け物を知らせるためとはいえ、ライとアリシアを置いて逃げ出したようなもの…


だが、マークのこの時の判断は街の皆を救う英断だった!


それでも、最愛の妻と、目に入れても痛くないほど可愛がっていた息子が目の前で殺されて、食われて……


きっと正気ではいられなかったんだろう…」




町長は最後にそう締めくくり、大粒の涙をボロボロと流していた


雷龍はそっか、と呟きぺたりと地べたに座り込む


町長の話を聞いて、雷龍は何も考えられなくなっていた


この頃のこの世界では、人が亡くなる大体の原因が老衰か病気か、後は事故くらいなものだった


神華の創ったこの世界では、国が出来ても戦争など、ましてやいじめもない優しい世界だったのだ


生存競争のそれ以外では殺生のない、美しい世界だった


だが、これはどういう事なのだ?


化け物が、人を殺した…?


生き物を創れるのは、この世界ではただ1人、神華しか居ない


では、神華がそのような化け物を、自分たち五つ神に内緒で創ったのか…?


わからない


神華はいつも何かを創った時は必ず五つ神全員に見せてくれていた


特にそう言った決まりもないが、それは必ずだった


だが、町長から聞いた様な化け物を、神華から紹介されたことは1度としてない


これは断言できる


ではなぜ、その存在するはずのない化け物が居て、ライ達を喰った?


聞けば、畑は踏み荒らされていてもそこにある物を化け物が食ったわけでもないらしい


化け物が喰ったものと言えば人間、それしかない


何故…?


神華は人間を愛していたはずだ


五つ神の中でも人間にとっては恐怖の対象である僕も愛してくれるほど


神華という創世神である彼女は、愛情深い人だ


そのはずである


なのに、何故?


何故人間を食らう化け物が、この美しい世界に存在している…?





~過去 雷龍side end~

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