第48話
雷龍の思考は停止してしまっていたが、すぐにそれを戻し情報を集めるために動く
雷龍はとりあえず手にべっとりついてしまった血を洗い流し、玄関を開け放ち、通りすがりの町人に声をかける
「…ねぇ、君
この町の1番偉い人、ここに呼んできてくれない?」
「え……?
あ、雷龍様!?
え、えと、どうかされましたのでしょうか?」
最近は良くライ達の家に出入りしていたおかげか、雷龍のことは町中に知られていたらしく、町人は雷龍だと分かると分かりやすく萎縮してしまった
ただの町人である自分が、まさか五つ神の雷龍に声をかけられるなどと思ってもみなかったのだろう
だが、今の雷龍にとってそれはただ煩わしいだけのものである
「………ここのご主人が亡くなってるの
だから、連れてきて?」
「は、はいぃぃい!!」
おっかなびっくりしており、まごついている町人ににっこり頼めば、涙目で走り去って行った
それに少し苛つきながらも、雷龍はライ達の家に戻り、中を見て回る
やはりどこにもライと、その母親であるアリシアが見当たらない
おかしい
おかしいのだ
ライ達親子は、いつもどこでもみんな一緒だった
ライの父親である彼、マークが家に居るのならライとアリシアも家に居たはずなのに
自殺など考えるような男でもなかったし、もし自殺しようとしたならアリシアが必ず止めているはずだ
なのに、マークは自殺しているし、ライとアリシアは家に居ない
不安が渦巻き、嫌な予感しかしない雷龍は嫌な方向へと想像力が働きだした頃、町長が家に来た
「ら、雷龍様!!
マークはどこですか!!?」
慌てて走りこんできた町長をいさめ、雷龍はマークへと視線で促す
町長は雷龍の視線をたどり、マークを見るとガクリと膝を着いた
「あぁ、マークお前まで……」
「お前までって、どういう事…?」
雷龍の、町長を見る目が細く、冷ややかになっていく
それに息を飲んだ町長は、一瞬で渇いてしまった唇を湿らせて喉を震わせた
「も、申し遅れました
わたくしこの町の町長をしております、ディックと申します
先日、3日前のことですが、マークの妻アリシアとその息子のライが、何やら見たこともない化け物に襲われて、殺されてしまうところをマークは目の前で見ておるのです…
そのショックでずっと魂が抜けたようにぼうっとしておったので、昨日おととい様子見に来ていたのですが………」
そこまで言うと、町長のディックは言葉を切り、頭を左右に振った
雷龍は頭が真っ白になる
アリシアとライが……?
もしかしたら、聞き間違えかもしれない
「……………町長、3日前のこと、もう1回言って?」
「3日前にアリシアと、ライが見たこともない化け物に襲われ…」
「詳細を詳しく」
聞き間違えなどではなかった
では、その経緯は?
雷龍は町長の言葉を遮り詳細を要求すると、町長は言いにくそうに詳細を語った
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