第43話
だから、信哉はあそこにだけは行きたくない
何としてもそれだけは阻止しなければならない
あの2人の人生を見てきた信哉は、彼女たちのようにあんなに永い間我慢し、生きて行ける自信は塵ほどもないのだ
逆に、あそこに閉じ込められた瞬間発狂する自信ならある
だから、何としても阻止するために、信哉は紅の胸に抱かれ慄いたままの自身を叱責し、乾いた唇のまま声を絞り出す
信哉「………雷龍は、何でオレを、神華と美月を閉じ込めたの…?」
雷龍「はぁ?
そんなの決まってるでしょ!
あんたたち神龍を閉じ込めないとこの世界が滅びちゃうからでしょ!!」
信哉は雷龍の応えに衝撃を受けるとともに頭上にクエスチョンマークが大量に浮かぶ
何故閉じ込めないと世界が滅びるのか、信哉には理解できなかった
この世界を創ったのは、神華で
その生まれ変わりが、美月で
その生まれ変わりの生まれ変わりが、信哉、己自身だ
神華はこの世界を創り、護り、慈しみ、育てていた
なのに何故、神華がこの世界を滅ぼそうと言うのか
何故神華の生まれ変わりである美月と信哉がこの世界を滅ぼそうと言うのか
信哉「ボクが……
ボクがこの世界を滅ぼすわけないじゃないか…!!」
気付いたら、信哉は思い切り叫んでいた
それは、神華の想いだった
それと同時に、信哉の思考が薄くなり、神華のそれが表に出てくる
信哉が叫んだあとの一瞬の瞬きで、強い意志を宿していた漆黒の瞳が、愁いを帯びた銀に変わる
それが誰の色なのか、雷龍たち五つ神は瞬時に理解させられた
それは、神華の色だった
雷龍には神華だからこそ聞きたいことがあった
だから、雷龍から疑問をぶつけられた
雷龍「では今一度問う!
何故あの魔物を生かした!?
何故魔物どもを滅さずに生かす!?」
その声は、雷龍らしからぬ、地を這うような低い声だった
あの魔物、そう言われて神華には思い当たるものが1つだけあった
以前にも、口調は違ったが雷龍に同じことを聞かれたのだ
何故魔物を生かすの?と
雷龍「神華ならば知っていたはずだ!
魔物を滅してしまわねば、人間は死に絶えてしまうと!
そして神華は気付いていたはずだ!
魔物が異常に増加していたことも!!
何故魔物などという害悪を生み出した!?」
雷龍の声は、怨嗟と後悔の念が入り混じっていた
雷龍も昔を思い出してしまったのだろう
雷龍のその瞳には憎しみとともに、悲しみの涙が浮かんでいた
あれは遠い昔
神華がこの世界を創り出し、五つ神を創り、人間も創り、永い永い時が経った後のこと
そう、まだ魔物が生まれて間もない頃のこと…
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