想い(ハッピーエンド)
第41話
目が覚めると、ぼんやりした視界に見知らぬ天井と紅い何かが見えた
次第にクリアになっていく視界の中で、紅いそれは紅だと分かった
すると次第に紅だけでなく、リンやライド、ギンゼスに翠龍を視認する
ゆっくり視線を巡らせて、信哉は己の現状を知った
信哉は横になっていて、紅に膝枕をされていた様だ
信哉「…………」
己の現状を理解した後に、周りを見るためにぐるりと見渡してみる
そこには、信哉が気を失う前までいた皆がいた
信哉からしてみれば、神華と美月の長い長い一生を見てきた分、感覚的に何百年と過ごした訳で
皆が何一つとして変わっていない事が“当たり前”のはずなのに、何故だか物凄い違和感しか感じられなかった
信哉は上体を起こし、座ったまま紅の目を真直ぐに見て話しかける
信哉「……ねぇ、紅
謝りたい事って、何?」
神華と美月の過去を見てきて、心と頭をぐちゃぐちゃに色んなものを掻き混ぜられたままだが、信哉はこれを聞かなければならないと、紅を見る
そんな信哉に紅は目をそらしてしまうが、またすぐに信哉と目を合せる
紅「………あぁ、オレは謝らなきゃいけねぇ…
信哉、思い出したんだよな…?」
不安そうに揺れる紅の瞳をひたと見据えながら信哉は小さく頷く
神華のこと、美月のこと、信哉は思い出したのだ
辛く、悲しい記憶もすべて
おかげでドロドロとした後ろ暗い感情が信哉の心に大きく巣食っている
紅は大きく息を吸い、ゆっくり吐出した後、重たい口を開いた
紅「……信哉、美月、神華、本当に申し訳なかった
こんなことで許してもらえるとも、許して欲しいとも思ってはない
オレは、オレ達は、お前を独りにさせてはいけなかったんだ…
神華も美月も独りが嫌いなのだと知っていたのに、オレは……!?」
ズガアァン!!
紅の謝罪の途中で、雷が落ちた
雷が落ちる数瞬前に気付いたらしい紅が信哉の身体を抱きかかえてその場を飛びのいた
ほんの少し前までは居た場所に、寸分違わず落ちた雷
もし紅の反応が後ほんの少しでも遅れていたら、きっと信哉と紅は雷に打たれて死んでいたかもしれない
そう思うと、信哉は寒気がした
?「なぁーにしてるのかなぁー?
紅龍」
にっこりと、可愛らしい笑顔で男性がギンゼスの城へと入ってくる
彼を信哉は知っている
神華と、美月の過去で会っている
そう、彼は雷龍だ
雷龍の表情はいつも通り可愛らしいそれなのに、今の彼は目が笑っていなかった
そんな彼に、美月の恐怖がよみがえる
だからだろうか、信哉の身体は知らぬ間に震えていた
そんな信哉を安心させるために紅は信哉を抱き寄せる
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