第40話

読んで、震えた


ワタシの中の、総てが


その震えは、色んな感情がワタシの中で渦巻き、去来して、弾けたのと同時だった




美月「…………“独り”………」




ポツリと、無意識の内にワタシの口から溢れた言葉


それは誰にも聞かれる事は無く、ただ床に転がり空気にとけた


床に彫ってあった文字の一人称は違えど、想いは違わなかった


ワタシは独りだ


そう、強く感じていたのは確かな事実なのだから………―――


この文字を見つけた時の淡い希望は粉微塵に吹き飛ばされてはしまったけれど、ワタシの中には不思議な充足感があった




確かに、ワタシは一人だ


でも


此処にはこの文字を残した人の魂が居る筈


だから


独り ではない


この人もきっと


ワタシと同じで


此処に一人だったのだろう


人としての貌は 今は ないのかもしれないけれど


床に書いてある様に


“此処に居る”


だから


ワタシは“独り”じゃない


端から見たら、きっと 異常者 なのだろう


居ないものを


見えないものを


“居る”と言っているのだから


でも、それは地球で、“化け物”が居ると言っていた時のワタシとなんら変わらない


ワタシにとって見えるか見えないかの違いでしかない


だから、ワタシにとっては彼(一人称から美月が勝手に推測したから“彼”と呼ばれているが、実際は“彼女”だ)は此処に居るのだ


ワタシと一緒に


だから


ワタシは独りじゃない




そう思えた事に、ひどく安心した


ワタシは例の文字の近くに横になり、目を閉じる




嗚呼、もう 終り にしよう


彼に出会えたんだ


名前も顔も知らないけども


彼と会って、話してみたい


だから


彼の下(もと)に行こう


そして 語り合おう


彼ならきっと、ワタシの事を解ってくれる




今度、もし生まれ変わるとしたら、男の子になってみたいな…


そしたらきっと、彼の事を今よりも理解し合えると思うんだ


男女の友情は壊れがちだけど、男と男の友情はきっと、続くはずだから


だからきっと、ワタシが男の子に生まれ変わったら、彼と一緒に居られるわ…


そんな事をどこか壊れた思考が、ワタシの頭の中を廻っていた


でもそれも、すぐに終わることになる


あぁ、眠たくなってきたや


このまま意識を、全てを手放してしまえば、きっと彼に会える






おやすみ

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