第39話

どれほどそうしていたのか分からないけど、ワタシはいつの間にか寝ていたようだ


ぼんやりと周りを眺めて相も変らぬ暗闇の中で、やはり夢なんかではないと再認識して、また落ち込んだ


鬱々とした思いが胸中に渦巻き、表情を更に暗くする


何度も死のうかと思っては、あの言葉を思い出しては思い止まる


やっぱりダメだ、と


思い出すのは、2人の言葉


1人目はもちろん紅で、もう1人は雷龍


前者は告白の時の、あのセリフ


思い出すだけでも頬は朱に染まり、不思議と心が暖かくなる


そして、後者はこの暗闇に入る前に耳元で呟かれた脅しの様な言葉


脅しのようなとは言うものの、十中八九、ほぼ脅しで間違いないのだろうが


思い出してしまったら、恐怖に顔を青ざめさせ、身体の震えが止まらなくなる


ワタシは、雷龍が恐ろしいのだ


見た目は男性だとは思えないほど可憐で、可愛らしい子どもなのに


見た目にそぐわない声と言葉と、目


あれほどの感情を向けられるのは、初めてだった


だから、尚更恐怖してしまうのだろうか




それからまた、いくらかの長い永い年月が経ったと思われるある日、ついにワタシは死ぬ決心がついた


何時まで経っても誰も、愛しい男性(ヒト)すらも来ない


ただいたずらに時間が過ぎていくだけで報われない日々


もう、限界なのだ


身体が


想いが


心が……―――




美月「あなたが居ないなら、ワタシの居る意味なんて無いの……


あなたからの愛を貰えないのなら、ワタシが生きる意味も無い


此処から出られないし、あなたも来ない


だからもう……―――」




また、一筋の涙が溢れ落ちた


何気なくその涙が溢れ落ちた場所を見てみると、文字が書いてあった


ただこれは、書いてあったと表現するよりも、彫ってあったと言う方が適切であるかもしれない


今まで何1つとして見つけられなかったというのに、これから死のうと決心してから見つけるだなんて


つい薄く自嘲してしまう


彫られてある文字の上をさらりと撫でてみた


……これは、凄く古い傷だ…


そして、ふと思ってしまった


もしかして、此処にはワタシ以外の誰かも閉じ込められていたのかもしれない と……―――


そう思うと私は、これ以外他に何かこれを書いた人の手掛かりはないかと探し始めた


そして一通り探したものの、ワタシは何も見つけられなかった


それは、遺体も見つけられなかったという事だ


見落としもあったかもしれないが、1つ希望が湧いてくる


もしかしたらこの文字を残した人は無事に此処を出たのかもしれない


そんな希望がワタシの胸の中を満たしてくれる


急いで例の言葉を紡ぎ、光を得て文字を読む


そこには綺麗な文字で、こう書かれていた




“ボクは此処に居る


ボクは“独り”は嫌だ


“独り”になるくらいなら、ボクは……………


死ぬ”

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