第38話

地獄に落とすという雷龍のその言葉と一緒に、前に押し出すように背中を押され、扉からおよそ1メートル程離れた所で足が縺れて転んでしまった




美月「きゃ…っ!!」


紅「美月!!」




紅が弾かれたように駆け寄って来てくれていたが、扉の中に辿り着く前に無情にも扉が閉まり、ワタシは真暗闇の中に閉じ込められてしまったのだ


そして、最後の希望を絶つかの様にさっさまでおよそ1メートル程先にあった扉が、音もなく消え去った




美月「!!?


ぅ、嘘でしょ…?


ゃ…ヤだっ


出してっ!!


紅っ!!!」




扉があったと思われた場所まで駆け寄り、外に出る手段はないかと探すがそれらしき物は、何1つとして見つけられなかった




美月「紅……っ」




愛しい男性(ヒト)の名を、美月は無意識下に呼んでいた


が、その震える声に応える人は居ない


好きだって言ってくれたのに…


抱きしめてくれたのに……




美月「~~~っ!!!」




ワタシは声にならない悲鳴をあげて、その場に泣き崩れる


どうしようもない思いが 感情がワタシの胸中に渦巻いて、心をかき乱して


どうにも出来なくて、ただ ただ泣く事しか出来なかった




あれから、何日か分からないが、沢山の日々が過ぎ去った


最初の内は懸命に涙をこらえ、やや現実逃避気味に時を指折り数えていた


だがそれも、何時しか止めていた


長い時を数えても


出口を探しても


何をしようと無意味に終わると悟ったからだ


だが、泣く事だけは、何時まで経っても止めなかった


否、止めようとしても、止められなかった


そしてその時想うのはいつも紅の事ばかりだった


産まれてからずっと、片時も離れた事はなかったのに


どんなに呼んでも応えなどなくて


それが悲しくて、辛くて


涙が止まらなかった




美月「――――我は神を保ち、信ずる者也――――」




ふと、何の気もなくポツリと呟いた、というよりも零れ落ちた言葉


そして、その後に薄く 淡く ワタシの周りが輝いた――


いや、これはワタシの中から溢れている




美月「どうして………


来てよ、紅…


貴方がワタシを好きだと言ったのは、嘘だったの…?


紅、好きだよ………」




そう呟くと、またじわりと涙が滲み出し、視界が歪んだと思ったらポロポロと涙が溢れ落ちた


あなたの傍で、愛されたかっただけなのに


いつまでたっても止まらない涙


紅が居ればそれだけでこの涙が流れることなんてなくなるのに


涙とともに小さく漏れる嗚咽もこの空間ではすぐに静寂に掻き消される


どうしても辛くて、哀しくて、苦しくて……――


気持ちだけを持て余し、どうすれば良いのか総てが分からなくて


ワタシはただ、泣き続けた

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