第37話

紅に腕をクンっと引っ張られ、紅の胸へ倒れ込むとそのまま閉じ込められた


そして、背中に回された腕が力強くワタシを抱き締め、顔がボンッと朱くなった


ワタシは、恐る恐る紅の背中に腕を回す


ほんわかと胸が暖かくなって、この世界にきてやっとワタシは人心地つく事が出来た




美月「えへへ…」




不意に嬉しさが抑えきれず、笑みが溢れた


何とも締りのない声と表情をしているが、やっと想い人と結ばれたのだから、しょうがない


だが、そんな優しく、幸せな時間は、長く続かなかった




雷龍「うわぁーっ!


お2人とも、あっつぅーい


でもぉ、ちょぉーっと良いかなぁーっ?」




バリッと、雷龍の言葉と一緒に離された




美月「あ……」




雷龍達が意外と早く帰ってきた事に驚き、それと同時に雷龍が此処にいる事にまた恐怖する


甘い2人だけの世界から現実に、突き落とされた気分だった




雷龍「さぁーて、美月と紅龍には来て貰うよぉー♪


皆、向こうで待ってるからぁー、早く行こっ♪」




雷龍はクルリと美月の後ろに回り、背中を押してくる


雷龍の細い、華奢な身体の何処にこんな力があるのか疑いたくなる程の力で、ラダ森の奥へと押されて行く


紅はその後を眉間に沢山の皺を寄せ、雷龍を睨みながらも何処かやるせない顔をして、ついてきた


少し進むと、開けた場所に不自然な扉があった


その扉を初めて見た様な


でも、久しぶりに見た様な


不思議な既視感に見舞われる


そして足下から背筋、頭へと這い上がってくる不愉快な悪寒


それと同時に沸き上がる嫌悪感と恐怖感


思わず後退りしそうになったが、後ろから押してくる雷龍のせいで行動にはうつせなかった




雷龍「さぁ美月、あの中に入って来てぇ?」


美月「ゃ……っ」




脚が震え、恐怖はぬぐえず頭から血の気が引いて行く




雷龍「早くぅー、ちょっとだけで良いからさぁー」




ちょっとだけその言葉に今のこの状況をどうにか出来るのなら と、心が揺れた


それに目聡く気付いた雷龍は更に口を動かし、私の心を揺り動かす




雷龍「ほらほらぁ、ちょぉーっとだけで良いからさぁー?」




雷龍の言葉に従い、扉の前に立つ


真後ろには雷龍がいるままなので、雷龍から逃れようとするなら前に、扉の中へと行かなければならない


扉がひとりでに開かれ、中が伺えたが真っ暗で何も見えなかった


それがより一層恐怖心を誘うが、雷龍から押されているため少しずつ歩を進める


扉の真ん前に立ち、一歩、中に踏み入れた瞬間、雷龍に耳元で囁かれた




雷龍「美月、死のうとか考えないでよね


そんな事一瞬でも考えた瞬間、恐怖のどん底に…


地獄に突き落としてやるんだから……」

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