第35話

雷龍「あーっ、何2人ともイチャついてんのーっ?


僕も美月とイチャイチャしたぁーいっ!!」




そう言うと、こちらへ歩いてくる小さい影


ぇ………ゃ、ヤだ…


本能的なもので、彼が近づいてくるのを拒否する




――ボクに近付かないで…っ――




そんなワタシの心が、誰かと……――ボク――……と重なった


だからこそ、それはワタシの恐怖心をより一層煽った


男性とはあまり思えない可愛らしい顔と小さく、華奢な身体


怖がる要素なんて微塵もなく、むしろ可愛いコなのに………


でもワタシにとって彼は、ただ畏怖の対象でしかなかった


近付きたくない


近寄って欲しくない


そんな思いから、震える脚を叱咤して後ろへと後ずさる


しかし、そんな些細な抵抗も虚しく、彼の小さな愛らしい顔がワタシの目の前まで来た


もう逃げられない


そう思った


端から見れば、雷龍がただワタシの顔を覗き込んでいる


たったそれだけなのに


ワタシが後退った分だけ紅との距離も広くて、嫌な程 ワタシは1人だと見せつけられている気がして

どうしようもなく 涙腺が緩んだ


そしてじわりと滲んでくる瞳


手足が 身体が 言う事をきかなくて、寒いわけでもないのに 異常な程に震えた


まるで 鉛をつけているかの様に動かない四肢


それは 自分のものじゃないかの様に…


まるで 何かに押さえつけられているかの様に、ピクリとも動かない




雷龍「美月ってば、そんなに脅えないでよぉーっ」




眉尻を少し下げて、困り顔で言う雷龍


そして、そんな雷龍はワタシの心中などお構い無しに耳元に顔を寄せ、囁いた




雷龍「つい、イタズラしちゃいそうになっちゃうじゃん?」


美月「ひっ……っ!!」




雷龍は耳元から退き、にっこりと可愛いが、目の笑っていない笑顔を向けてきた


そんな雷龍に対してワタシは、脅えきり 顔は青ざめ、恐怖に負けて ぺたりとしりもちをついた




紅「美月…っ!!


止めろ、雷龍っ!!」




紅が急いでワタシに駆け寄ってきてくれた


ワタシとの距離も後少し


そんな所で、紅の目の前に雷龍が来て、立ちはだかる




紅「っ


退けっ!!」


雷龍「ヤだぁーっ


ダメだよぉー、 紅龍


これからする事は紅龍も、以前同意してくれたでしょー?


これはもう、決まったことなんだから邪魔しちゃぁ、ダぁーメっ」


紅「………っ」




反論できなかった紅は悔しそうに顔を歪め、力一杯拳を握り締めていた


そんな紅を満足そうに見た後、雷龍はワタシの方に振り返った


振り返った雷龍を見て、ワタシは息を飲み込んだ


そのついでに恐怖に喉が鳴ったのも仕方ない


先程までの柔和そうな表情はなりを潜め、狂気に狂い 残虐で冷酷さを孕み、ワタシを睨みつけていた

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