第34話

それから2人で歩こうとした時に、見知らぬ4人の男性がワタシ達の前にいた


とてもカラフルで、とても美形なその男性達


知らない 筈 だけど、知っている


解る 筈 なのに、分からない


矛盾したものが、ワタシの中で入り乱れる


あなた達は ワタシ


不思議と、そんな言葉が出てきた




?「あーっ


美月だぁー♪


やっと逢えたねぇー


僕、すーっごく逢いたかったよぉーっ」




太陽のように光り輝く金髪に、猫を思わせるような金色の眼で、つり目が特徴の可愛らしい、恐らく男性に言われた


ワタシの中で、疑問が噴き出る


何で…?


何でワタシの名前知ってるの……?


可愛らしい彼の、可愛らしい笑顔


それを見て、可愛いなぁとほっこりすることもなく、ゾクリと背中を這い上がる寒気


そして、それと同時に沸き上がる懐かしさ




?「あれぇー?


もしかして、美月ってば僕達の事分っかんないのっ?


あーんなに仲良くしてたのにーっ」




そう言って可愛い男性が、ぷーっ と頬を膨らます


とても可愛らしくて微笑ましい光景なのに…


どうしても美月の中に居座るのは底引きならぬ恐怖と、それに勝る郷愁感




紅「――………雷龍…


テメェ…っ」




どういう事か分からず、呆然としていたワタシの横で、紅が怒っていた


紅の滲み出る殺気に体が竦みつつも、やはり疑問しかない


………なんで?




雷龍「あっ、さすがに紅龍は僕達の事分かってるよねっ♪


良かったぁー、久しぶりっ」




怒れる紅と正反対に、雷龍と呼ばれた男性は親しげに愛らしく微笑んだ


それが紅を煽っているように見えるのはきっと私の気のせいなんだ




?「…止めろ雷龍」




雷龍の頭をぺしり と叩いたのは、色鮮やかな森林を思わせる翆色の髪に、深く知性を携えたようなエメラルドグリーンの眼の、綺麗な男性


その線の細い眉の間には皺が寄っていた




雷龍「いったぁーいっ


緑龍こそ止めてよぉーっ」




雷龍はまたぷーっ と頬を膨らませ、頭を叩いた緑龍を睨む




緑龍「…分かった


だから、お前は喋るな」


雷龍「えーっ!!


ヤだヤだっ


美月と紅龍といっぱいお話しするのーっ」


?「雷龍


貴様いい加減に黙れ」




銀に近い碧色の髪に青い眼、まるで水面の様に凪ぐこのとのない表情が、まるでこの世のモノではないかの様な、綺麗な男性が雷龍を黙らせる




?「…美月、自己紹介が遅れたな…


私の名は、翠龍」


?「オレは、風龍…」




長い白髪を1つに纏め、綺麗な黒眼が全てを見透かすような、それでいてどこか儚く消えそうな印象の男性も自己紹介してくれた


これでやっと全員の名前が分かった


雷龍、緑龍、翠龍、風龍


そして、紅龍…




――“君達はボクだ”――




不意にそんな言葉が頭の中で、浮かんでは消えた


唐突なそれにワタシはさらに困惑する


………え?


今のは………“何”?


知らない声


だけど知っている


ワタシであって ワタシではない何か


――――怖い


ただ単純に、そう思った


ワタシが、ワタシでない様な、どうも形容し難い恐怖感に襲われた


そして無意識に紅を頼りにしていたのだろう


気付けば、紅の服の端を掴んでいた


そして紅は、そんな心中を察したのか、優しく暖かい手でワタシの手を包み込んでくれた


たったそれだけ


それだけの事なのに、ワタシは酷く安心した

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