第32話

美月「………此処、な、なんか森みたいなところだね…?」


紅「………そう、だな…」




勇気を振り絞り、少し吃ったものの紅に尋ねるが、歯切れの悪回答しか返ってこない


………やっぱり紅の態度がおかしい…


ワタシには、言えない事なのかな…?


ワタシには話せない事?


………やっぱり、ワタシに 力 がないから…?




紅「………きっと大丈夫だ


だから、そんな表情(カオ)すんな」


美月「ぇ?


ぁ、うん…」




微苦笑を浮かべた紅にクシャリと頭を撫でられる


そんな表情(カオ) って、どんなカオ?


ワタシ、どんな表情してた?


また………


紅に心配かけた…?




?「貴様等、何奴じゃ?」




いきなり後ろから声がした


驚いてびくりと肩を揺らしてしまったのは、仕方のない事であろう




美月「……ぇ…?」




これって、ワタシ達に言ってる…の、かな…?


他に誰も居ないかキョロキョロと辺りを見渡すが、視界に移るのは紅龍と、さっき喋った壮年の男性だけだった


そこでやっと納得する


……ぁ、ワタシ達に話しかけてるのか…


ぼんやりとそこまで思い到った所で男性が焦れた様に喋り出した




?「何奴か、この我が輩が訊いておるのじゃっ


応えんかっ」


美月「へっ?


ぁ、あぁ…


あの、ワタシは美月です


神保 美月」


?「ほぅ…


そっちのお前さんも名乗らんかっ」


紅「…チッ


………紅……」




ワタシが応えると、紅も舌打ちした後に応えた


男性はそれをさほど気にしてはなかった様だが、紅の名前に反応した




?「“紅” じゃと…?


あぁ、忘れとったの…


我が輩は、ギンザスじゃ


ギンザス・ウィニリア・セイア」




その男性の名にピクリと紅が反応したのが分かった


紅とギンザスが、お互いがお互いの名前に反応した


もしかして、知り合いなのかな…?


ぁ、でもそしたら、顔見ただけで何かしらの反応があるはずだよね…?


でも………


やっぱり紅はこの世界の関係者なのかな…?


紅に訊きたい


………けど、話してくれないのは、話したくないってことだよね…?


ぐるぐると聞きたいことが頭の中で回る


そのまま、少しの間沈黙が下りた


まるで、紅とギンザスが腹の探り合いでもしているかのようにも感じた


が、その沈黙もすぐにギンザスに破られた




ギンザス「……それで?


お主らはここで何をしておったのじゃ?」


美月「ぁ、えっと………」




説明しようとして、言い淀む


何と応えたら良いのか、解らなかったのだ


「異世界から来ました」 なんて言って、信じて貰えるだろうか?


もし、そんなことを宣う人が目の前に居たら、ワタシなら……


無理かな…


頭大丈夫かすごく訊きたくなっちゃう


だって、それってすっごくイタイ人だよね?

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