第28話

風龍たちに連れられるままボクの知らない道を歩き、大きい扉の前で風龍達が止まった




神華「?


此処何処…?」


雷龍「神華にねぇー、此処に入って欲しいのぉー」


神華「此処に…?」


雷龍「そぉー♪


一人で入ってねぇー、取って来て欲しいのぉー♪」


神華「…取って来てって……


何を取ってくれば良いの?」


雷龍「それはぁ、入ったらすぐにわかるよぉー」




雷龍の要領を得ない説明はいつも通りなので、特に言及することもなく、ボクは頷いた




神華「そうなの?


わかった


じゃぁ、行ってくるね♪」


雷龍「うんー♪


いってらっしゃぁーい♪」




ボクは何の疑いももたず扉を開けて、奥へ歩いて行った


10メートルぐらいだろうか、そのくらいまで歩いて行くと扉が閉まり、あったはずの扉がなくなっていた


突然のことにボクは急いで扉があった場所へ駆け寄ったが、時すでに遅し


ボクは風龍達によって暗く、何もない所に閉じ込められた




神華「風龍!?


雷龍!?


緑龍!?


翠龍!?


紅龍!?


皆!!


どういう事!?」




扉があったと思われる場所でいくら叫んでも、応答はなかった


そのことに焦り、ボクはありったけの声で皆に呼びかける


それでもやはり、返答はない


それどころか、もしかしたらボクがここから出られなくなっていることを知らないのかも…


そんなことを思い、ボクは声を張り上げる


でも


あれから何時間も呼び続けたが、誰からの返事もなく、途方にくれた


そして、それだけの時間もあれば、ボクが出られないことを知らないなんてこともなく


意図的に、ボクをここに閉じ込めたんじゃないのか…


否、故意にボクをここに閉じ込めたのだと、理解してしまう


そう理解してしまうと、何故という疑問がわき上がる


ボクは何故閉じ込められなきゃいけないの…?


ボクは何も悪い事なんかしてない…


何か嫌われる様な事もしてない…っ!!


なんで…?


ボクの頬を涙が伝う


いっぱい出てきた疑問と不安と一緒に、涙も出てきたみたいだ


皆といるときは誰かが拭ってくれた涙も、今では誰も拭ってはくれない


涙があふれるままに頬を濡らしていく


イヤだよ…


こんな、暗くて何もない所なんて…


イヤだよ…


ボクは一人になりたくない…っ!!


一人は嫌だっ!!!


ボクは誰かが、助けに来てくれると信じてた


でも


何時間経っても


何日経っても


何週間経っても


何ヶ月経っても


何年経っても


誰も………


誰も一人として来てはくれなかった……………


ずっと暗闇の中で、ずっとずっと待っていたのに…


ボクはずっと気付かなかった


いや、気付きたくなかった……


そして、気付いていても気付いていないフリをして


知っているのに、知らないフリをしていた


もう既に、ボクは“一人”じゃなくて…


本当に、“独り”なんだという事に…




その事を自覚して、涙がずっと止まらなかった


ボクは一人になりたくなくて、がんばった


でも………


“独り”になっちゃった…


もう、嫌だよ………

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