第29話

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あれから、何万年もの月日が流れた


………気がする


これはあくまでボクの主観にすぎないのだが


真暗闇の中に居たボクには、どのくらい時間が経ったのか判らなくなっていた


だって、太陽も何もないここでは、朝も昼も夜も何も関係ない


ただ無為に時間が過ぎるだけだ


その時間を正確にはかる術をボクは持たない


それでも、緩やかに過ぎていく時間は、ボクの心を犯すには十分だった




神華「嫌だよ………


ボクを此処から出して…


独りはイヤ…っ!!」




独り、暗闇の中で涙を溢した


既に涙が枯れていてもおかしくないくらいの時間は過ぎたはずなのに


ボクは何も変わらないまま


いくら待っていても、いくら叫んでも、誰も来ない


そしてまた、ボクは“独り”なんだと痛い程実感して、“イラナイ存在”なんだと思い知らされる


どんなに涙が溢れようとも


もう、誰もこの涙を拭ってはくれない


どんなに寂しかろうとも


誰も傍にいない


そんな世界に、ボクは何を見出だせば良いのか分からない


ホントにボクは“一人”じゃなくて、“独り”なんだ…


なんだか、思考もぼんやりとしてくる


嗚呼、ボクが“イラナイ存在”なのだから、死んでも誰の迷惑にもなんないよね…?


………でも、死ぬ前に、ホントの事、言わなきゃね…




ボクは最初

“皆を傷つけたくないから”

ってボクが皆から離れて行ったって言ったけど、ホントは違うんだ


皆がボクから離れて行ったんだ………


ボクが皆と違うから…


ボクが“オカシイ”から………


ボクが“イラナイ存在”だから……………


“イラナイ存在”


でも、ボクが此処に居たという証拠ぐらいなら、残しても良いよね…?


だって、ボクは今此処に居るもの………


例え、誰にも必要とされていなくても………


まだ何かを書き残すくらいの力はあるんだから……


ボクは床に指を当てて、最後のコトバを書き記す




“ボクは此処に居る


ボクは“独り”は嫌だ


“独り”になるくらいなら、ボクは……………


死ぬ”




さぁ、ボクの最後の時間もそろそろ終わりだ………


いつまでも終わらない地獄に、死ぬということでボクに終止符を打とう


ボクは今日、此処で死ぬ


これは、ただの逃げかもしれないけれど、今の僕にはこれ以外此処から逃れる術を知らないんだ


嗚呼、もしも


もしも、次があるとするなら


もしも次、生まれ変われるとしたら


次は今のボクみたいな可愛げのないヤツじゃなくて


もっと可愛いらしい、皆に愛されるような女の子っぽい、女の子になりたいな……………


………なんて、無理か…






さようなら

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