目覚め

第22話

翠龍「ま…、待てっ!!


彼奴が神龍様の生まれ変わりだとっ!?


そんな事、信じられるかっ!!」


紅「フンッ


じゃぁ、手前ご自慢のあの水の玉をどうして信哉に壊せたってんだよ?


説明してみろ」


翠龍「………」


紅「先ず、オレの話しを否定したけりゃ、手前のさっきの失態の理由を教えてくれよ?」


翠龍「!!」


紅「どうした?


何か一つでも反論はねーのかよ?」




信哉が神龍の生まれ変わりだということが信じられなかったのはやはり翠龍も同じだったようですぐに反論したが、紅にぐうの音も出ないほど言い負かされる


翠龍は苦虫を噛み潰した様な、苦い顔をしていた


紅に一つも反論出来ないのが、余程嫌だったみたいだ


が、翠龍は紅が言っていることが正しいと、理解したようで苦い顔のまま視線を逸らした


紅はそれを確認してから信哉へと向き直った




紅「信哉…


やっぱり、憶えてないよな?」


信哉「?


何、を…?」


紅「神龍だった事…」


信哉「神龍だった事…?


そんなの、憶えてるわけ…」




視線が泳ぐ


神龍だったことなど、憶えているはずがない


紅が言っていることが正しいとして、信哉が本当に神龍の生まれ変わりだとするのなら、前世のことだ


憶えているはずがない、それなのに、信哉の心は何故かざわつく




紅「辛いかもしれないが、思い出して欲しいんだ」


信哉「…な、んで?」


紅「信哉に…、――に、謝りたいんだ


だから、思い出して…」




思い出す…?




――思い出しちゃダメ…っ!!――




…何…?


誰?


この声…


知らない、けど


懐かしい…




紅「思い出して


信哉、自分の名前は?」


信哉「オレの……名前…?


………信哉…」



紅「名字は…?」




――言っちゃダメっ!!――




信哉「神、保………」




――ダメっ!!!――




信哉はいきなり気を失った――






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




此処は……何処…?


信哉は気付いたら真っ暗で何もないところに居た


何もないと思っていたが向こうに光が見える


信哉は光が見えた方へ歩き出すと、徐々に光が強くなった


そしてその光の中に、ヒトがいた


銀色の長い綺麗な髪に、同じく銀色の綺麗な瞳


綺麗なコだった




?「嫌だよ………


ボクを此処から出して…


独りはイヤ…っ!!」




そのコは泣いていた


一人称は“ボク”と言っていたが、声や容姿からして女性だろう




信哉「………だ、大丈夫…?」




信哉はそのコに話しかけたが反応は無かった


まるで、こちらの声が届いていないかの様に


そして、ここには誰も居ないかの様に……


そっと触れようとして、また気を失った――






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




また気がつくと、何もない真っ暗なところにいた


恐らく、さっきと同じ場所だろう


また向こうから光が見えた


さっきも思ったがこの光は、なんか………


――――寂しそうで、哀しそうで……………


辛そう…――――


何故か心を握り潰されているかのような感覚を味わいながら、信哉は光の方へと歩いて行く


今度は金髪でユルフワの長い綺麗な髪と、金色の綺麗な瞳


その可愛いコが“何か”を呟いた




?「――――――――――――」




そのコが“何か”を呟いたら、光が一層綺麗に光輝く




?「どうして………


来てよ、紅…


貴方がワタシを好きだと言ったのは、嘘だったの…?


紅、好きだよ………」




ポロポロと大粒の涙が、そのコの大きな瞳からこぼれ落ちた


そこでまた、気を失った――

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