第17話

信哉「リン、翠龍様ってだr…」




ドォォオォォ…ン


翠龍様って誰? と聞こうとしたらいきなり、爆音と共に部屋の真ん中で煙が上がった


それはちょうどリンと信哉、その向かいに居るギンゼスとの間だった


小さな砂埃が一気に舞ったみたいでとてもじゃないが、目が開けられない


何が起きたのか、2人とも理解が出来なかったようでそれぞれが声を上げる




ギンゼス「何事!?」


リン「シンヤ、ギンゼス様!


無事ですか!?」


紅「っ!


これは………」




信哉が砂埃で咽ている間に煙が収まってきた様で、煙の中にぼんやりと人影が見えてきた


恐らくこの人影が、この爆音と煙の原因となった人物なのだろう


煙がきれいに晴れ、その人物が鮮明に見えた




紅「やっぱり……………


貴様は……翠龍!!!」


リン「翠龍様!?」




紅とリンの声が重なって聞こえた


もちろん、そう聞こえたのは、信哉だけなのだが…


信哉は小さな疑問を覚えた


リンは純粋な驚きと、敬愛に満ちた声だったのだが、紅の声は深い憎しみの色に彩られていた気がしたのだ…


信哉は疑問に思いつつ煙の中にいた男性に視線を向ける


その男性は、とても綺麗だった


銀に近い碧色の髪に青い目


整った顔


まるで水面の様に凪ぐこのとのない表情が、まるでこの世のモノではない様な綺麗さを醸し出していた


そんな綺麗な男性に、思わず見とれる


リンやライド、ギンゼスも整った顔立ちではあるが、この男性はそんな彼らを凌駕した美しさを持っていたのだ


紅とリンに翠龍と呼ばれた男性が近づいて来た


何だろうと思っていると、翠龍が信哉の目の前まで来る


だから尚更、何なのかと訝しんで見ていると、信哉の腹に手を翳す翠龍


ただ、手を翳しただけと思ったら、その手をそのまま腹に突っ込まれた




信哉「う゛、あ゛ぁああぁぁあ゛っ!!!?」




あまりの痛さに、信哉は思わず悲鳴を上げる


それは今まで感じたことのない痛みだった


信哉は余りの痛さに、痛いと言う事しかわからなくなる


痛い…痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!!!


手を突っ込まれた腹部の痛みと脳の焼け切るような痛みも同時に感じながらも、

翠龍が手を動かすたびにグジュリ、ブチブチブチッと、人の腹から鳴ってはいけない音も聞こえていた


そしてやっと信哉の腹のナカから翠龍の手と一緒にズボォ…っと引き摺り出されたのは


ヒト…?




翠龍「貴様………やはり、人の子のナカに居ったか…


紅龍!!」




拷問のような痛みがやっと終わった信哉は、ぐったりとそこに倒れたまま、己自身から出てきたそれを見上げる


オレのナカから出てきたこのヒトが、紅…?


紅らしき人物は、信哉に背を向けていたため顔は見れなかったが、恐らくイケメンなのだと思わせるそれがあった


信哉よりも頭半分ほど大きかった翠龍よりも更に頭半分ほど大きく、やや線が細めな翠龍とは違い、理想的な細マッチョと言っても良い引き締まった身体をしていた




紅龍「翠龍………!


貴様がオレに何の用だ


信哉に何て事しやがる…」




低く、唸るように言ったその人


その声は、いつも己のナカで聞いていた声だった


だから、信哉には彼が、本当に紅なのだと確信した


が、それにホッとしている暇はない


何故か紅と翠龍は2人共、お互いがお互いに嫌悪しているような険悪ムードが漂っている


なんで…?

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