第15話

~リンside~




僕が何故王城へシンヤを連れて来たのか、その理由を話そうとしたその時、突然シンヤが倒れた


僕の方へと倒れてきたシンヤを咄嗟に抱き止める


その瞬間、シンヤからフワッと香る良い匂いがした


シンヤを抱き止めると、思っていた以上にその身体は軽かった




?「気安くオレに触ってんじゃねーよ、離せっ!!」




シンヤから、低いドスのきいた声がした


いつもとは違う言葉遣いにリンは混乱する


今喋ったのって、シンヤ…?




?「離せっつってんだろ!」




ドンッと身体を押され、シンヤが立ち上がると、その際に手を払い除けられた


どうにか尻餅をつくことはなかったが、リンの頭上には疑問符が大量に浮かび上がる


どうなってるんだ…?




リン「シンヤ…?」




いつもとは違う様子のシンヤに恐る恐る声をかけてみる


すると、シンヤはこちらを向いた


リンは驚く


シンヤの瞳は髪と同じく吸い込まれるかのような、珍しい漆黒色だった


それが今や、その瞳だけが燃え上がるような真紅色に染まっていた




?「あ゛?


オレは信哉じゃねーよ、紅龍だ」




……………ぇ?


こ、紅龍って、あの……?


一瞬、意味が解らなかったが、すぐにピンとくる


シンヤが魔物を焼き払った時の、あの炎


あの炎は紛れもなく、紅龍の神気が多く練り込まれたものだった


やはり、シンヤは紅龍だったのか…?


そこまで思考が及ぶと、身体から血の気が一気に引いていった


薄ら寒さすら覚える


そして、身体が震えだした


そう、それは紅龍が恐ろしいからだ




~リンside end~






~紅龍side~




紅「紅龍だ」




そう堂々と己の名を名乗る


それだけでリンとギンゼスが固まってしまった


やはり、自分は恐怖の権化として今の人間たちに理解されているのだと、理解してしまう


が、まぁ無理もないだろう


オレはそれだけのことをやった、と紅龍も理解していた


が、今は関係ない


わざわざ信哉の体を乗っ取ってまで、こちらに出てきたのだ


早く用事を済ませて体を信哉に返さないと…




紅「さっきまで、信哉のナカで話聞いてたが、その予言って翠龍(スイリュウ)の予言じゃねーだろうな?」


ギンゼス「な、何故それを…」




紅龍の問いかけにギンゼスが震える声で逆に問いかけられた


分かりきったそれに、紅龍は鼻で笑って応える




紅「ハッ


何故って、五つ神の中で予言出来るヤツなんて、翠龍しか居ねーだろ」




翠龍のヤツ……


翠龍とは、五つ神、水神


紅龍は火を司る神だが、翠龍はその弱点である水を司る神だ


翠龍は、紅龍が五つ神の中で1番嫌いな相手だ


この2人は相性がとてつもなく、悪いのだ


属性でも、性格でも


翠龍は普段からすまし顔なのだが、紅龍からするとそれが苛つく原因でもある


いつも澄ました顔して、何かと自身に突っかかって来る…


それがカッコつけているようでイライラし、それと同時に思う


まぁ、どーせアイツもオレの事が嫌いなのだろう、と…


つまるところ、水と油のような2人なのだ


あぁ、アイツの事を考えただけでも、ムカつく、苛つく


翠龍なんか、大嫌いだ






~紅龍side end~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る