第13話

信哉とリンは、リンが“ギンゼス様”と呼んだ、玉座に座る銀髪の男性の前へと来た


さっきまでは、遠目だったため良く分からなかったが、近くで見るとその男性もかなりの美形だった


碧のかかった銀髪に、青い瞳


堀の深い眼鼻立ちに、白く透き通った肌


凄く綺麗だけど、リンとは違う、威厳のある綺麗さだった


ライドやリン、そして目の前の銀髪の男性、皆美形ばかりで顔面偏差値が平均くらいはあるはずと自負している信哉はふと不安になった


この国は、美形ばかりだと思うのは、オレだけか…?


なんか、オレだけ浮いてる、よな?


だってオレ、全然美形じゃないし……




?「我が名はギンゼス・ウィニリア・セイア


この国の主である


ジンボ・シンヤなる者、そなたにはちょっと聴きたい事があるが…


良いかな?」


信哉「ぁ、はい…」




静かな声が、信哉に問うた


その静かな声の持ち主、名はギンゼス・ウィニリア・セイア…


純日本人な信哉にとっては性と名だけではなく、ミドルネームのある外人の名前は長く感じ、憶えにくい


さすがに全部をすぐには覚えきれんぞ…


まぁ、この目の前の王様やリンたちは外人ではなく、正確には異世界人であるのだが


とにかく、異世界人とか関係なく、この国の主のフルネームを覚えるのは些かしんどい


そんな信哉の感情が表情に出ていたのだろうか


リンに肘で腕をつつかれた


何かと思ってリンの方を見たら、小声でたしなめられた




リン「シンヤ、顔!


そんな面倒くさいなんて顔思いっきりしないで…!」


信哉「!」




しまった! と思い、慌ててポーカーフェイスで平静を装ってみたが、時すでに遅し




ギンゼス「ジンボ・シンヤ、我が名はちょっと長いかもしれんが、気にせんで良い


我を“ギンゼス”と、好きに呼んでくれて構わん」




まさかの本人からの名前呼びOKが出た


突然のことに目が点になる


彼は恐らく、というよりもほぼ確実にこの一国の主である男だ


そんな人の名前が覚えにくいと言うだけでファーストネーム呼びをしても良いのだろうか?


否、良くない


というか、信哉は一国の主にとても失礼な事を思ったし、表情にも思いっきり出してしまっている


もしかして、打ち首…?




ギンゼス「打ち首になどせんよ」




不意にギンゼスから言われる


信哉は打ち首にされるかもしれないと考えただけのつもりだったが、声に出してしまっていたようだ




信哉「あっ、ごめんなさい…」




あぁ、恥ずかしい…


恐らく敬うはずである相手に対して失礼なことを思っただけでなく、口にも出してしまうだなんて


それでも、それを許容できる器を持ち合わせているギンゼスは、きっと良い統治者なのだろう

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