第10話

信哉は、紅との心の中の会話を終えて目を開けると、リンがライドの治療をしていた


ライドの損傷部に当てたリンの手が震えている


力の使い過ぎで手に力が入らないのか、それとも恐怖がまだ抜けきらないのか…




信哉「…リン?


手が震えてるよ?


大丈夫…?」




信哉がリンに話しかけると、リンの肩がピクリと揺れた




リン「だ、大丈夫…」




リンの声も震えている


この震えは、恐怖からくるものなのだろうか


もしかして、紅の力が怖いのだろうか…?


そんな疑問がふと信哉の心に影を落とした




信哉「………もしかして、オレが怖いの…?」




だから、ぽつりとその疑問が信哉の口から零れ落ちた




リン「………べ、別に…?


そんなんじゃないよ?」




震える唇で、そんな言葉を紡ぐリン


リンは、笑おうとしているのだろうが、その微笑みはひきつっている


これではその言葉が嘘ですと言ってしまっているようなものだと言うのに




信哉「………そう…?」




色んな言葉を飲み込み、その一言を添えて信哉も微笑んだ…


つもりだが、ひきつっていなかっただろうか?


目の前に鏡はないので確かめる術はないが、リンの態度で何となく分かる


不意にリンから視線を外された




リン「……………」


信哉「………


ら、ライドは大丈夫、だよね…?」


リン「………うん…


ある程度の治療は出来たし、後はゆっくり寝かせておけば、大丈夫だと思うよ?」


信哉「ホント?


良かったぁ…」




沈黙に耐えきれず、会話の種としてライドの容体を聞くと、大丈夫だという回答をリンから得られた


ホントに良かった




リン「………シンヤ、ありがとう」


信哉「!


ぉ、おぅっ!」




ホッとしていると、リンからお礼を言われた


それがなんか、少し照れ臭かったのは多分、お互い様だと思う






~リンside~



信哉「………もしかして、オレが怖いの…?」




不意に、確信をつくようにシンヤが寂しそうな声で問いかけてくる


そんな声で聞かないで


僕は誰も傷つけたくないんだ




リン「……………べ、別に…?


そんなんじゃないよ?」




小刻みに震える身体を叱咤して、やっとの思いで言葉を絞り出し、僕は微笑んだ…


けど、上手く笑えた気がしないや…




信哉「………そう…?」




シンヤの辛く、悲しい声が聞こえた


シンヤは微笑んだつもりの様だが、かなり苦しそうに歪んでいる


そんな表情させるために、言ったんじゃないのに…っ




リン「……………」




僕はシンヤの苦しそうな微笑みは見ていられなくて、視線を反らした


それで事態が好転するはずないと知っているのに




信哉「………


ら、ライドは大丈夫、だよね…?」


リン「………うん…


ある程度の治療は出来たし、後はゆっくり寝かせておけば、大丈夫だと思うよ?」


信哉「ホント?


良かったぁ…」




シンヤの方から話題を変えてくれた


正直それに助けられた


僕からは何も、きっと切り出すことは出来なかったであろうから


そしてシンヤはライドが無事だときいて、これまでのが嘘かの様に、嬉しそうに、綺麗に微笑んだ


それがとても、綺麗だった


つい、シンヤに見惚れてしまっていた


本人は嬉しさで気付かなかったみたいだが…




リン「……………シンヤ、ありがとう」


信哉「!


ぉ、おぅっ!」




シンヤはまた、嬉しそうに微笑んだ






~リンside end~

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