第6話

信哉の心の中の問いに応えたのは紅だった




「いや、ここは多分、異世界だよ


だから正しい言い方は外人じゃなくて、異世界人だな」




頭の中から紅の声が響いてくる


異世界という言葉に頭がくらりとした


異世界なんて小説やアニメの中だけのもの、それが世の中の常識である


だが、“化け物”などという非常識で、非現実的なものを実際に目にして殺してきた信哉からすると、異世界などというものも、あながち間違いではないように思えてくる


あぁ、ついにオレは“化け物”を見て、殺すだけでは飽き足らず、異世界にまで来てしまったのか…


諦めと同時に、納得もしてしまった


自分だけに見える“化け物”、他人のナカには居ない自分でないものの存在、己の自由意思で操れる炎


自分が他の皆とは違うと、感じていたし、何故か理解もしていた


だが、ここはそうではない


恐らく、ライドとリンも何かしら属性を持ち、それを自分で制御して操れる


そんな確信が何故かあった


そして、その根拠のない確信が、安堵をもたらした


ここでは、この異世界では、自分も皆と同じなのだと


もう、孤独感に苛まれなくても良いのだと…




信哉「…なぁ…


此処はどこなんだ?」


ライド「はぁ?


何言ってんだ?


此処はルミリア国、国王のギンゼス様の私有地の内の1つ、ラダ森だ」


リン「そういえば、シンヤはどうやってこの森に入ったの?


ギンゼス様の許可がないと入れないはずなんだけど…」




…ルミリア国…?


ギンゼス様…?


ラダ森…?


聞きなれぬ地名や人名にクエスチョンマークを頭上に飛ばす信哉


ルミリア国など、地球上の国名にはなかったはずだ


国王のギンゼスなる人物もテレビやラジオ、ネット等でも見聞きしたことはないはずである




「ほらな


ここは異世界なんだよ」




紅が信哉のナカからやけに自信と確信を持って囁く


なるほど、ここが異世界なのか…


俄かには信じられないが、周りを見渡す限り納得せざるを得なかった


周りの森の木がとてもカラフルなのだ


赤や黄色の葉っぱだけなら紅葉の時期なのかとも思えたのだが、幹や葉っぱも紫だったり

幹が青で葉っぱが赤だったり、緑の幹に茶色の葉っぱ


不思議な色合いの森なのだ


あまりに色の統制がとれていなくて目がちかちかするくらいに




ライド「おーい、シンヤ?


大丈夫か?」


リン「シンヤ?」


信哉「…ぁ、あぁ


大、丈夫…」




ライドとリンに心配され、大丈夫と頷きながら返す


2人は信哉が地球からやってきた異世界人なんてこと知っているはずもなく、ぼんやりとしていた信哉を心配してくれたようだ


なるほど、こういうさりげない優しさがあるイケメンと美人がモテるんだな

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