第5話

信哉は自らの思考と生い立ちを自嘲しながら、いつもの角でいつもの様に左へ曲がる


すると、いきなり浮遊感を覚えたかと思うと、フッと目の前が暗くなった


それと共に、まるで眠りに誘われるように信哉の意識は徐々にフェードアウトし

最後にはブツリと意識が途絶えた






「起きろ!


おい、信哉!!!


起きろ!!!」




ふと、遠く


いや、近く


否、オレのナカから焦ったような、否、今朝寝坊したときのような声が聞こえた




信哉「……………紅?」


「信哉、目が覚めたか?」


信哉「ん………


…ねぇ、此処何処…?」




寝ていたせいか、少しぼんやりとした目を擦りながら上体を起こす


信哉が起きると、そこには見慣れない景色が広がっていた


信哉は街中を歩いていたはずなのに目の前には木が沢山あり、此処が恐らく森なのだろうとは解った


どういう事だ…?


さっきまで……そう、意識が途絶えるまでは学校からの帰り道、いつもの街中だったはずだ


それなのに、なぜ自分はこんな木が鬱蒼と生い茂る森らしきところに居るのか…?


頭をひねるが、やはり解らない


紅からの返事が来る前に、森の中から誰かの話し声が聞こえてきた




?「おい、今何か落ちて来なかったか?」


?「あぁ、こっちからだ…」




誰だ?


誰かこっちに来る…っ!


ガサッ




?「ぉ、お前は誰だっ!?」


?「アラギスの者かっ!?」


信哉「へっ!?


…アラ、ギス…?」




な、何だ、アラギスって…?


森らしき場所で初めて会った美形に詰問される


だが、信哉はアラギスと言う単語が恐らく国か組織の名前を指していると思われるが、何のことかさっぱりわからなかった


困惑した信哉はアラギスの名を鸚鵡返しに聞き返すことしか出来ず、そんな信哉に謎の美形は苛立たしげに誰何を問うた




?「オイ、そこのお前、何者だっ!?


早く答えろ!!」


信哉「…あの…


人に名前を聴くなら、普通自分から名乗るもんじゃないですか?


礼儀がなってないですね」




にっこり笑顔でディスる


礼儀知らずの他人に名乗ろうなんて思わないよね




?「す、スマン…


俺は、ライド


ライド・ナミアだ」


?「私はリン


リン・アクアだ」




最初に名乗ったライドは、肩ぐらいまである綺麗な金髪で、目の色も金色で、カッコイイ


ギャルやヤンキーが染めたような痛んだ髪ではなく、外人さんのように地毛だからこそ出る色艶がそこにはあった


日本人のようなのっぺりしたような顔ではなく、欧米風の堀の深いイケメンだった


次に名乗ったリンは、腰らへんまである長く、艶やかな黒髪に、目は水晶みたいに綺麗な紫色で、綺麗


こちらはロシア系の美人さんを彷彿とさせる顔立ちで、一言で言うならやはり美人という言葉が似合うだろう


イケメンと美人の2人組が名乗ったので、信哉もそれに倣い名乗る




信哉「オレは、信哉


神保 信哉」


ライド「ジンボ・シンヤ…?


変わった名前だな…」


リン「ちょっとライド、それはないでしょ


初対面の人相手に…」


ライド「だって、今までこんな名前聞いた事なかったし…」




ライドとリンのやり取りを聞き、2人の名前の方こそ日本ではあまり聞かない


この2人はやはり外人さんなのだろうか?

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