第4話

ラッキー


保健室でサボるだけだったつもりが、先公の方から早退の許可が下りた


早退まで考えていなかった信哉は、少し返事に吃ってしまったが、特に先公も怪しんではいなかったので、良いのだ


だが、自分の顔は、パッと見ただけでも分かるくらい青いのか…?


という、小さな疑問も出てくる


まぁ、早退できるのは嬉しいけど…


そんなとりとめもないことを思いつつも教室を目指して歩き出す


信哉は、教室に戻ってくると、体操服から制服に着替えてから帰る準備をする


といっても、通学バックとは別の学校指定のセカンドバックに体操服を入れるだけで終わるのだが




「良かったなぁ?


早退できて


オレ様に感謝しろよぉ?


ちょっと顔が青く見える様にしてやったんだから」




信哉のナカで、紅が偉そうに言う


もし紅が言った通り、顔色を変えてくれたのならば信哉は感謝するべきだろう




信哉「はい、はい


ありがとよ…」




そんな紅に投げやりな感謝を告げて信哉は学校から家へと帰る


帰り道、信哉はいつも1人


いや、ナカに紅が居るから2人……


信哉と紅は、信哉が産まれてから、ずっと一緒だった


だからなのかは知らないが、信哉には皆には見えないらしい、化け物が見える


その化け物達は、小さい頃から信哉を狙っていた


何故自分が狙われるのか、そんな至極真っ当な質問を紅にしたところ、こんな回答が返ってきた


紅曰く、“化け物”が信哉を襲う理由としては


力が強いと美味いらしく、信哉本人にはあまり自覚はないが

信哉の力はかなり強いらしい


だからと言って良いのかは悩みどころだが、そのせいで信哉に“今は”家族がいない


そう、“今は”だ…


以前は信哉にも家族は居たのだ


でも、信哉のせいで死んでしまった…らしい………


これもまた紅から聞いた話なのだが


信哉がまだ小さくて、やっと言葉が発声できる様になったとき

信哉が家族の居る家に“燃えろ”と言ってしまったらしい


そして子供にしては力の強すぎた信哉のその言葉で、紅の力を十全に引き出してしまい、家族諸共家を消し炭へと変えてしまったらしい


そのせいで、信哉は家と家族を失った、と…


そう紅に聞いたのだ


最初に聞いた時は信じられなかった


信じられなかった、のだが…


今の信哉には昔の記憶がない以上、紅のその話しをそのまま信じるしかなかった


いくら幼く、事の重大さを解っていなかったとはいえ、家族を殺したのは自分なのだと…


もちろん、他の大人たちはそんなこと露も知らないので、信哉の家族たちは不慮の大火事で亡くなったものと思われているのだが、信哉には真実を知る術を持っていない

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