第3話

オレの名前は神保 信哉(ジンボ シンヤ)


オレは今、ピンチかもしれない


いや、ピンチだ………


ピンチなのを考えるよりも本能が悟っていたようで、ピンチを自覚したときにはオレの右頬をつぅっと一筋の汗がすでに流れていた


オレは今、学校にいる


今は2クラス合同の体育の授業中だ


外のグラウンドで、男子はクラス対抗サッカーをしている


女子は確か、体育館でバスケでもしているはずだ


いや、女子の事とか、体育の授業内容などどうでも良い


今にもまた自分のクラスにゴールが決まりそうだとか、そういう事もどうでも良い


今、オレの目の前のピンチをどうにかしなければならないのだ


そのピンチとは今、オレの目の前に俗に言う、“化け物”がいるということだ


“化け物”とは、人やどの動物とも違う異形の者共だ


この“化け物”が居るからオレはピンチへと陥っているのだ


“化け物”が居るとは言っても、ここは現代日本


まさかのファンタジー世界ではないのだ


だが、実在しているその“化け物”は、今までオレが出会った人物の中で、オレだけにしか見えていない


だから、“化け物”が悪さしているのもオレには分かるし、それをどうにか出来るのもオレしか居ないのだ


さて、どうしようか………


オレのナカにいるアイツは炎の属性だ


アイツ、紅(コウ)とは仲が良い


親友、いや、唯一の家族とも言えるだろう


紅の力を借りても良いが、それをすればかなり変な奴に見える


でも放っておくと、何かしら厄介な事になる


というのも、これも全部オレの幼少の頃からの経験則だ


面倒事はキライだ…


ボソッと他のクラスメイト達には聞こえないよう小さな声で“化け物”への殺意を口にする




信哉「燃え尽きろ…」




ボンッ!!!




「オァァァアアアァ!!!」




信哉の呟きに反応したように“化け物”が燃える


その痛みに耐えかねた“化け物”が叫ぶ


断末魔の叫びだ


腹に響く、低い嫌な声


これを聞いてる時、いつも気持ち悪くなる


それは、今までの嫌な思い出があるからなのか、それともこの声が生理的に無理なのかは、あまり判別がつかないのだが




「保健室にでも行くか?」




“化け物”が燃え尽きた後を眺めていると紅がオレのナカから聴いてくる


こういう時、頭の中から直に声が響いてくる


声を耳から聞くのではなく、直に響いてくるのが不思議な感じなのだが、これにももう慣れた


そうだな…


先公に一言言ってから、保健室でサボろうかな………




信哉「センセー

気分が悪くなったので、保健室に行ってきます」


先公「なんだ、神保


顔が青いな…


担任には俺から言っとくからさっさと早退しろ」


信哉「ぁ、はい…」

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