第10話 いいえ、あたしは不器用な女

「「それで、〈あなたは誰ですか?〉〈どちら様でしょうか?〉」」



 せっかく待ち望んだ好機チャンスをぶち壊してくれた不とど――冒険者(らしき)の女性に僕たちは尋も、質問すると彼女は気まずそうな表情で一度ヒマちゃんを横目にして、三度みたび僕へと頭を下げた。


「彼女にも勿論だが、本当に、本当に申し訳なかったっ! キミの今の態度から察するに相当のが解った! おそらく、さっきのあたしのようなのだとっ!!」

「わ、解りましたっ! 解りましたから頭を上げて下さいっ!! 僕の方こそ態度に出ていたようですみませんっ!」


 内心イラついていたとは言え、確かに態度に出すのは失礼だよな。

 てか、僕の表情かおや態度でそこまで読み取れる彼女が正直怖い。


「改めて、あたしはシンディ・ライラスチナ・レイヴィス。冒険者をやっている」


 まぁ、何度も《らしい》とは思っていたので特に驚きはない。

 強いていうなら何故タイミングの悪い間で乱入したのかだが――



 ピコリ~ ン♪


 なんか久々に出てき……――



    ~  ♡ プ ロ フ ィ ー ル ♡  ~


 って、そんなのもあるんか~~~~いっ!?



名前:シンディ・ライラスチナ・レイヴィス


年齢:17歳


身長:175.3㎝


体重:51.4㎏


おっぱい:ポヨポヨ~ン♪


くびれ:ググっキュ!


けつ:プリップリン♡


「ぶっふぉっ!?」


「ど、どうしたっ!?」

「またですかっ!?」


「い、いや……な、なんでもない、ぞ?」


 不意打ちの文言ばくだんに吹き出し、そんな僕の様子に慌てた二人をやんわりと制して何とか取り繕えた。


 彼女たちが席に座り直す傍らで――


 うぉぉおおおおおおおおいっ!

 体重の明記でアウトだろーがっ! その上す、スリーサイズっ! 書き方ぁっ! 本人いるから数値表記より質悪いよっ!?

 書くやるならヒマちゃんの情報をプリ~~~~~~ズッ!!


 欲望込みの突っ込みを心の中でかましていた。




職業:冒険者(Dランク)


性格:生真面目で義理堅いが流されやすく抜けている。冒険者としては剣捌きと持ち前の俊敏性で活躍――してると思いきや抜けているお蔭でDランク停滞中。


 ……………………少々?


 何故そこだけ強調しているのかは気になるところだけど、話しを戻さないとなぁ。そもそも僕たちの方はまだ名乗っていなかったし。


「えっと、こちらこそいろいろと失礼しました。遅ればせながら僕は羽柴将憲で、こちらはヒマ……新垣緋鞠です。訳あって今日冒険者登録だけして、二人とも一応Fランクです」

「新垣緋鞠です。宜しくお願い致します」


 二人してシンディさんに一礼してから座り直していると、


「な、なななっ……な、な…………」


 大きく目を見開き口をパクパクさせて驚いているシンディさん。どこか驚く要素があったのだろうか。


 そして――


 バァンっ!


「あ、魔法を使っていながら……きょ、今日登録したばかりのえ、Fランク、だと……? う、嘘……だろう?」


 勢いよくテーブルを叩いて立ち上がり呆然と呟いた。


「あっはっはっは。よく判らないけど、もっと頑張んないとこの二人に抜かれちまうよ。としてそれで良いのかい? ねぇ、シンディ!」

「う、ぅむむ……」


 そこに用事で席を外していたハンナ姐さんが人数分のお茶を運んでシンディさんに発破を掛け、その彼女は難しい顔で唸りだし……え? 先輩?


「シンディさんが先輩? ひょっとして、ここで働いてたんですか?」


 僕が質問をすると、何故かそっぽ向かれた――もしかしなくても何かやらかしたとか? さっきのプロフィールを信じるならば……多分、じゃすまない気もするし……。


「あっはっはっは。その通り! えーと、9歳の頃うちに転がり込んできて冒険者を始める13歳になるまでホールで働いていてねえ。真面目なんだけど不器用というかなんというか、最初から最後まで料理をひっくり返したり、食器を割ったり、注文を間違えたり、会計を間違えたりが日常茶飯事で今となってはいい思い出さっ!」

「は、ハンナ姐さ~ん。そこまで言わなくても……」

「事実だろうに」

「そうだが……」


「「……………………」」


 本当に少々では済まなかった……。

 それ以前に、今までよく冒険者として生き残ってこれましたね……。


 このままではいたたまれない。


「と、取り敢えずシンディさんが姐さんを『ハンナ姐さん』と呼ぶ理由は判りましたけど、僕たちに何か用があって来たんですよね? さっきの口振りからしてここまでしてまで」


 なかなか切り出されない本題を僕から振ると、


「そうだった! Fランクの事実にショックを受けたが、使に頼みがあるからここに来たのだっ!!」


 そう叫んだシンディさんは身を乗り出して僕の手を両手で握りしめた。


「頼み……ですか?」


 正直なところ、乗り気にはなれない。


 決して悪い人ではないんだろうけど、いい雰囲気を邪魔されたことについてまだ許しがたいのもある。それから理由は知らないけれど、おそらくハゲゴリラたちを返り討ちにする場面を目撃して尾行するに至ったんだろうけど――陰からのその行動に引っ掛りを覚えていまいち聞いてあげる気になれない。


 初めて会ったことを抜きにして、例え先輩であっても――


 断りのセリフが喉まで出掛かったところで、


「マサくん」


 ヒマちゃんが小声で囁きながら服の裾を引っ張ってきた。


「ヒマちゃん? もしかして、受けるべきだと思って?」

「はい。これはチャンスかも知れないですし」

「チャンス?」


 断ることを察して止めたのだと思ってヒマちゃんに訊いてみると、小さく頷くヒマちゃんはシンディさんの存在が自分たちのになると判断したようだ。


「シンディさんが何をお願いするのかは判りませんが、彼女は先輩です。だとしたら、が得られるかも知れません。仮に何も出てこなかったとしても、ルーヴェイラ……いえ、ルーヴェルライド王国を立つまでパーティ? を組ませてもらえればと思います」

「た、確かに」


 流石ヒマちゃん。直情的な僕と大違いだ。


「シンディさんの頼み事って何でしょうか?」


 ヒマちゃんの提案に感心している間にヒマちゃん自身がシンディさんに用件を訊いていた。


「ああ、このルーヴェイラから離れたリューゲルの森にあるダンジョンのコアを取りに行くクエストを受けたのだが、そこでキミたちに同行してもらいたいのだ」

「ダンジョン? コア? えっと、よく判りませんがそれに同行してわたしたち、というより、頼りにしているってことですよね?」

「いきなり押しかけ、自分勝手な頼みをして悪いとは思っているっ! しかし、あたしに残された猶予はないんだっ!!」


「「猶予がない?」」


 焦燥感を滲ませ捲くし立てるシンディさんに僕たちが首を捻っていると、ハンナ姐さんが「ああっ!」と声を上げ手を打った。


「そういやぁ、冒険者は何歳からでも登録できるけど登録後んだったね」


「「ああ……」」


 そういえば登録した後の注意事項で聞いたことを思い出し、つい諦観の声を漏らしてしまう。

 どういう訳かヒマちゃんの溜息も重なっていた気がするけど……。


 えっと、シンディさんの登録日がいつなのかは判らないけれど、今彼女は冒険者で……あぁっ!


 そ、そっか、場合によってはシンディさんとパーティを組む期間がだいぶ短くなるんだ!


「えっと、シンディさん?」

「なんだ」

「ちなみに期限はいつですか?」

「……………………十日後だ」


 おお~、シンディさん……。


 これで僕たちが彼女と組むメリットはほぼ0%になったのだが――


「シンディさん。わたしたちとパーティを組んで頂けませんか?」


 しかし、ヒマちゃんは真っ直ぐにシンディさんにパーティの申請をしていた。


「え。ほ、本当にいいのか?」

「はい、わたしたちにも事情があります。シンディさんがわたしたちをように、わたしたちもシンディさんをと思っています。言い方は悪いとは思いますが、シンディさんから持ち掛けたお話ですので、そこだけは了承して頂ければと思います」

「あ、あぁ……勿論だ! よろしく頼む!」

「こちらこそ宜しくお願い致します」


 僕は置いてきぼりのまま女二人で契約が締結されにこやかに握手が交わされていた。



 にこやかな雰囲気なのに、ヒマちゃんの瞳に宿る妖しい光に気付いた僕は波乱の予感に頭が痛くなった。





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 ピロリロリ~ン♪


    ~  次 回 予 告 (仮)  ~


 いよいよ次回は冒険らしい回に突入する予定です。ダンジョンなんていかにもなシチュエーション! 


 ただし、予定は未定であり確定ではありません……。


 総ては駄作師である自分の気分次第なもので……。




  これからも生暖かい目で御声援の程宜しくお願い致します。

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