第3.5話 いやあああぁっ!
この世界に飛ばされたわたしとマサくんの前に現れたのはその元凶に似た《翼の生えた白い猫さん》でした。
その白猫さんが言うには、わたしたちは《冒険者》というのに選ばれてこの世界に散らばる七つの聖虹石という
若干の呆れと多大なイライラで白猫さんとお話をしているマサくんの隣で様子を窺っていると徐に白猫さんがオプションについて話した時、マサくんが目に見えて動揺しました。
「オプションって何ですか?」
そう訊ねたわたしにマサくんは明らかに何かを誤魔化そうとしていた事を察して重ねて訊ねようと口を開く前に――
「ここから先は女子禁制だからねぇ」
そんな白猫さんの言葉が耳に届くと同時に体が浮いているような感覚がした瞬間、
「え? きゃっ――!?」
マサくんと白猫さん、そして景色の総てがブレ――視界が暗転した私はそのまま意識を手放しました……。
――女ノ匂イダ……。
どのくらい気を失っていたのか判りません。その地響きのような重低音でどこか怨念を孕んだ声に目覚めたわたしは――
「ひぃっ!?」
曇天の空の下わたしを取り囲む異形な人ならざる者たち。あまりの悍ましい状況に恐怖で体が竦んで動けなくなりました。
立体化して溶けかけた人影のような容姿で真っ赤な眼を一斉に向ける彼らは、腰が抜けて動けなくなったわたしの方へじりじりと近付いてきました。
「女ノ匂イダ……アア、我ラニ天カラノ授カリモノガ……」
「オォ、久シ振リニ……女ガ、抱ケル……」
「女体ダ……女体ダ……今宵ハ宴ジャァアアッ……」
聞こえてくる不穏な言葉にわたしの体はさらに震え上がり、彼らに捕まった後の自分の末路を思うと涙が溢れてきます。
(マサくん、助けてくださいっ!!)
届かないと解っていても願わずにはいられません。
そして、先程の言葉通りであるなら間違いなく訪れる
(ごめんなさい、ごめんなさい……本当にごめんなさい……)
わたし自身の意思はなくても
「捕マエタ……」
「ひっ!」
掴まれた手首から伝わる生暖かく湿り気を帯びたザラザラな感触に慄く間もなく、
「きゃっ!?」
強引に引っ張られ前のめりの体勢で倒れる寸のところで背後から回された腕に抱き抱えられ羽交い絞めにされました。
「は、放してください……――っ!?」
体を激しく捩り必死の抵抗も虚しく背後の彼? に首筋を舐められ、全身に迸る悪寒と恐怖で萎縮していると、更に首筋だけではなく耳の裏や頬を舐め始めてきました。
「う、い、いやぁ……やめ、やめてぇ……」
鼻が曲がりそうな異臭にヌメヌメと唾液を塗り広げるかのように這い回る舌。
嫌悪感でぞわぞわする……密着し翻弄してくる一人だけに意識が向き過ぎていたわたしは、
「ひぃっ!? い、い、いやあああぁっ!」
殺到する魔手の群れに絶望の悲鳴を上げました。
「あ、い、いやぁ……だ、ダメです。はな、あぁん……やめ、てぇ…………」
制服越しから乱暴に鷲掴みされ揉みしだかれる胸。執拗に擽られる脇下に撫で回される脇腹とお腹。直に撫でられ、擦られ、舐め回される太腿を中心とした両脚。
撫で回すように揉まれ、時に叩かれて、下着の上からも割れ目をなぞられその奥の……あ、穴、まで穿られるお尻。
それに――
「や、いや……あ、そ、そこぉ。そ、そこだけはぁ――――あぁあああああああっ!!」
女の子の一番大切な処――
全身を
「いやぁ、放し……あぁ、ダメです。や、あぁんっ! ~~~~っ!? ……うぅ、あ、もう、ゆる……」
脳天から爪先に至るまで電流が奔りじりじりと熱を帯び、お腹の下辺りがじんじんと疼き……口から零れたはしたない声に自分でも驚きました。
そして、また自分が放り込まれた悪夢の現状を思い知らされます。
なのに――
「あ、あ、あぁっ。……くぅふぅん……… や、ぃやぁぁっ! んんぅ、も……ぉふぉぉ、おぉん!? だ、だめぇ……ダメですぅ~~っ!!」
心では拒絶していても、体が受け入れてしまいます。
それは、全身に染み渡る甘い毒のように――
「ソロソロ……頃合イダロウ……」
「アア、我慢ノ限界ダァ……」
「御開帳、御開帳ジャアッ……!」
(頃、合い? 御開ちょ……~~~~っ!?)
不意に聞こえた声で靄がかっていた思考回路が晴れていくにつれ、今現在のわたしの格好を含め取り巻く現状にただただ絶望しかありません。
いつの間にか通した腕がつなぎ止める落ちかけのシャツを残す下着姿にされ、数多の手と舌で隅々まで弄られ続け死にたいほど恥ずかしいです。
なのに、わたしの体は拒むどころか欲しがっている事実にもう消えてしまいたい……その上にっ!?
ご、御開帳……それって、誰にも……
「御開帳、御開帳ジャアッ……!」
「後生です。そ、それだけは赦し――い、いや、いやああぁぁぁぁぁっ!!」
今、
「「「ア、ア……アァアアアアアアアアッ!?」」」
「ふぇ……?」
もうダメです……そう諦めていたその刹那、奇跡が起こりました。
あれからどれだけ時間が経ったのかは判りません。
テレビのチャンネルを変えるかのように唐突に景色が切り替わって目の前には――
「ま、マサく~~~~~~んっ!」
最愛の人、マサくんがいて迷わず彼の懐に飛び込みました。
「こ、怖かったです……」
身嗜みが総て元通りになっていても(襲われた事実を彼に知られずに済みます)、大勢の人? に嬲られ穢された記憶や体感は深く刻まれて涙が止まりません。
万が一にも、マサくんに知られた時……嫌われるんじゃないか、と怖くて話すこともできず、幼い子のように泣き続けました。
「あっ! 待て――!?」
マサくんの焦った声が聞こえたその瞬間、辺り一帯に光の雨が降り注いで……――
「あー、マサくんったら……また立ったまま眠ってます」
気が付けば、隣で歩いていたはずのマサくんが後ろの方で立ったまま眠っていました。
「ふふ。告白の前も立ったまま眠って待っていましたね……」
そんな
不意にわたしの頭の中に一つの場面が映し出されました。
薄暗い背景の中で何か肌色の物体に黒い影のようなモノが纏わりついているどこか不気味で……なんだか、急にお腹の辺りがキュンキュンと――っ!?
(わ、わたしってば、マサくんの前で……な、なんて破廉恥な事を――っ!?)
これは危険です。何かは判りませんが、これについては思い出さない方がいい、とわたしの勘が囁いてきます。
わたしは先程の光景を頭の片隅に追いやって、まだ眠っているマサくんを起こすのでした。
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