第2話 おぉ、王様ぁ~っ!
目覚めたら見知った自分ちのベッドの上だった――なんて都合のいい話はなく、よく解らない幾何学模様の魔法陣が画かれた石畳の上だった。
近くで気を失って倒れているヒマちゃんの姿を捉えつつ此処が何処か観察してすぐに、多くの人たちに囲まれていることに気付いて冷や汗が流れる。
僕たちを取り囲み警戒態勢のフード付きの黒マントを羽織った魔術師(らしき)の集団と甲冑を纏い抜刀の構えで隙のない兵士(だよな)の団体。目の前でこっちを見据えているムダに装飾品装備のはd――煌びやかな男性が三人いるのだが、中でも唯一椅子に腰掛けあからさまに目立つ冠と深紅のマントって……。
「ようやく目覚めたようですな、王様」
「男の方だけだが、まあ、事情だけ説明してこの者自身に女の方に伝えさせれば良い……毎年ながら面倒だからな」
「御意」
ですよねー……確認する間でもなく王様ですよねー……あぁ、僕は、僕たちは異世界に来ちゃったんだなー……。
なんて現実逃避している場合ではなくて、何で王様自らこんな処にいるの? 普通は王座? 謁見の間? で偉そうに待機してるものじゃないの?
「……――いっ! 貴様! 王自ら質問なさっているのだ。サッサと答えぬか無礼者!」
「っ!? はっ、はい! たた、大変失礼致しましたっ!!」
「よいよい。この者も被害者故にそう目くじらを立ててやるな」
「はっ」
状況に混乱して話を聞いてなかった僕を叱責するお偉いさん(多分だけど大臣? か宰相?の人)を王様が諫めてくれた……って、普通逆なんじゃ、いや、今は訊きたい事だらけだ。
おそらく王様自らが止めてくれたのも早く話を済ませたいからだろう。面倒だと言っていたし……。
僕としても早くヒマちゃんと
だからこそ姿勢を正して――
「あの、発言の許可をお願いしても?」
「許す。いちいち発言の許可を取らなくとも良い。話しが進まぬし、何よりソナタも其処の女と早急に愉しみたいだろうし?」
慣れない話し合いに挑もうとする僕に、王様は意味深な発言をしながら訳知り顔でニヤリと――おぉ、王様ぁ~っ!
王様って傲慢で傍若無人なイメージだったけれど――この人最高だよ~~っ!
「まずはソナタが《異世界の者》だと認知した上で、こちらの格式ばった作法は無しとする。それでよいな?」
「判りました。助かります」
今から6、70年前、此処ルーヴェルライド王国の王城離宮内にある《国内視察用の》魔法陣が何者かによって操作され一組の男女が召喚された。
彼らはこの国どころかこの世界では見たことのない奇抜な格好をしていて言葉自体は通じるのに話す内容は意味不明だったため、当初の王は問答無用で処刑にしたそうだ。
またそのような事がないか三ヶ月ほど警戒したものの異常はなく、気まぐれな
「凄くえげつないですね……」
「そう思われても仕方はないが、突如として不審者が城内に不法侵入していたのだからなぁ。まぁ幾らでもやりようがあった事に関しては同意見だ――それからなのだが……」
「はい」
二度目の召喚者が処刑された翌年、翌々年、さらに翌年――と、毎年きっかり同じ日に奇抜な格好をした一組の男女が召喚された。
流石に毎年同じ現象が起これば容赦なく処刑にする訳にもいかず、初召喚から約8、9年後になって彼らの事情を訊く事にしたらしい。
その頃には王様も代替わりしていて先王の冷徹さを忌避していた
それでも根気よく続けた結果、五組のペアの話を聞いて《擦り合わせていくにつれ総て一致した事》、その際彼らに掛けていた《真偽鑑定魔法で〈真〉と示された事》で、召喚者たちに一ヶ月分の生活費と慰謝料を支払い、特例として国内での永久居住権を譲渡した――それ以降毎年訪れる召喚者たちにこの説明をした後に一ヶ月分の生活費と永久居住権を譲渡してそのまま釈放の流れになったと……――
「複数のペアから訊いて情報を整理したからこそ……あ。さっき出てきた慰謝料っていうのは」
「うむ。しっかりと見極めたかった、と先王は保護という名の拘束を長年してきたのだ。当然期間が長かった者たちほど慰謝料が多い、もっとも最後の組に関しては情報提供料となるか」
「その先人たちの事があって僕たちも受け入れて頂けるのですからありがたいです」
王様の話を聞いて納得すると同時に微妙な気持ちにもなる。
僕たち召喚者の共通点、それは結ばれたばかりのカップルである。国籍は問わず僕たちの世界の人間である。(強制的に)翼を生やした黒猫に導かれた者たちである。
そして何より僕たち男側に発令される――
ピロリロリ~ン♪
図ったようなこのタイミングに今度は何っ!?
Q・召喚者の境遇を知っていてお愉しみを指摘していた王様にお・ね・が・い♡
~ 選 択 肢 ~
1・僕たち早くイチャイチャしたいので一旦席を外して頂けませんか?
2・僕たち早くイチャイチャしたいので何処か適当な部屋を貸して頂けませんか?
3・僕たち今から公開セッ○スします。チップのご用意を宜しくお願い致します!
「ぶふぉっ!?」
な、な、なな――なんでやねぇえええええええええええええんっ!
そりゃ早くイチャイチャしたいよ? 誰の邪魔も入らない場所でイチャイチャしたいよ? だからってコレは明らかに――
「不敬罪じゃねぇかぁ~~~~っ!!」
また選択肢の意味がない上に最後のヤツっ! そ、そりゃ将来的に――って、思うけど! どんな変態プレイだよっ!? どちらかと言えば――
「公開処刑じゃない……――あっ!」
あぁあああああああああああっ! 衆人(失礼)環視の中で選択肢に気を取られ過ぎたとはいえ、王様の前でとんでもない醜態を晒したぁあああああああっ! これはマジ人生、オワタ……。
悲観的になった僕だったけれど、
「ぷっ……くっ、くくっ……ふははははははははははっ!」
「へ?」
突然大笑いする王様に呆然。え。なんで?
「いや、すまん。魔法師にそれを《可視化魔法》で視える様にして貰っていたのだが……いやはや、毎回来る者たちは我らを前に気まずげに顔を逸らしていた。まああんなことが書かれていたのだから誰だってそうなろう……が、我らの前で堂々と突っ込んだのはソナタが初めてだ! 気に入った!」
「あぁ~~……」
そうだった……
「さて、我らからは以上だが、何か訊きたい事はないか?」
諦めの心境の僕に王様が問い掛けてきた。この流れだと例年通りに生活費と居住権を譲渡されて送り出されるのだろう。
おおよそ《一ヶ月分》というのは異世界人といえど永久に暮らさせて生活費まで貰えるとなれば国民たちは黙っていないだろうから、つまり一ヶ月以内に生活の術を見つけろというメッセージなんだと思う。
あとは同郷の先人たちがいるから彼らから学んでいけってことだろう。
となると特には……あ。
「あの、僕たちが召喚された時、王様自ら足を運ばれていましたよね」
「ふむ」
「普通は報告を受けたら王座? 謁見の間? まで呼び出して待機しているものではないのですか?」
些細な事だけど、王様が自らとなると異常というかなんというか……。
「実をいうとソナタの言う通り、部下から報告を受けたら召喚状を送りつけて部下が連れてくるのを玉座で待機して……とは数年前までだな」
「と、言いますと?」
僕の問い掛けに王様はいい笑顔を向けて、
「どのようなアベックが召喚されてくるのか純粋に興味があるからだなっ!
おぉ、王様ぁ~っ! それ、ただの野次馬じゃないですか……。
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子乙女 壱騎です。早速恒例(?)のお礼をしたいと思います。
るいきゅう! に続き、応援して下さった M様。
本作品を一時でもフォローして下さった Y様。
誠にありがとうございます。
皆様も宜しければ本作品の応援・フォローをお願い致します。
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