第3話 予選

さて、格闘大会の大人の部、予選が始まる。


俺にとって予選など余裕過ぎる。


俺の眼中には、決勝の魔王しかいない。


いや、魔王すら眼中にないかもしれん。


会場をテキトーに歩いていると、親父がいた。


「おう、ガビじゃねえか。

 お前は子供の部で5歳の時にサリオン君に勝って以来、負け続き。

 大人の部ではがんばってくれよ!」


そう、俺は毎年開かれるこの大会で、5歳の時以降、サリオンの野郎には毎回わざと負け続けた。


今回は違う。サリオンと戦いになろうが、やつの立場など知ったことではない。


もう富と女は手に入れた。


あとは名声のみだ。


18歳となった今、俺は公衆の面前で魔王を打ち倒し、俺が魔王として君臨するのだ!


すると、魔王からの呼び出しがあったので、俺は魔王のもとで向かった。


「おお、来たか、ガビよ。」


「なんだい、八百長でもしようってか魔王様。」


「にゃ、にゃにい!!!

 なぜわしの考えが分かった!?」


「ふっ、魔王の考えることなど簡単に読めるさ。

 俺に負けるのが怖いのだろう?

 だからまた金と女をよこすから、試合に負けてくれとでもいうのだろう?」


「そ、その通りだ・・・。

 他に何を望む?

 何でも言え、わしは皆の前で負けるわけにはいかんのだ!」


「俺の欲するのも、それは・・・。

 魔王の座だ!」


「ぐぬぬぬ・・・。

 きさまーーーー!!!

 よかろう。

 わしとてこの13年、指をくわえてこの日を待っておったわけではない。

 研鑽を積んできたのだ。

 負ける気などない!

 (いや、ちょっとある・・・。小声)」


「ふん、首を洗って待っているがいい、魔王!」


そう言って俺は魔王のもとを去った。


さて、予選第1回戦。


相手はスライムキングだ。


スライム一族100万匹の王だ。


ただ者ではない。


ふつうはな。


俺の前では、ただ者だ。


さっそく第1回戦が始まった。


舞台は円形のコロシアム。


周りを取り囲むように観客がびっしりといる。


「さあ、第1回戦は中ボスの息子・ガビ VS スライムの王・スライムキングだああああ!!!

 レディー・ファイトーーーー!!!」


「ふぉっふぉっふぉ。

 ラストダンジョン中ボス様の息子。

 なかなかにあなどれませんな。

 18歳とお若いようで、若い芽は摘みたくはないのですが・・・。

 私はスライム一族の期待を背負っている。

 勝たせていただきますぞ!」


「ふん。その期待、裏切ることになるだろうぜ。」


スライムキングが仕掛けてきた。


「スライムボンバー!」


体当たりと同時に、体液を弾き飛ばした。


さながら散弾銃だ。


体液が俺にまとわりつく。


身動きが取れない。


そのまま、俺はスライムキングの体内に飲み込まれた。


く、くるしい・・・。


息ができない。


密閉空間では酸素が無いためファイアも使えない。


「ふぉっふぉっふぉ。

 スライム一族秘伝の技はいかがかな?

 スライムだからとあなどってもらっては困る。

 このまま窒息していただきましょうぞ。」


ま、まずい・・・。



なーんてね。


ちょっとこいつの強さを確かめただけさ。


実は、こいつに飲み込まれる直前、俺は膨大な肺活量で空気を大量に吸い込んでいた。


そして、そのため込んだ空気を一気に吐き出した。


そこに現れた酸素を使い、俺はファイアを使った。


「ファイア!!!」


俺とスライムキングは火だるまになった。


スライムキングは俺を吐き出し、のたうち回る。


一方の俺は超高位魔族であり全属性耐性を持つため、当然、炎など効かない。


「ふぉーーーーーーっふぉっふぉ!!!!

 あついよ、あついよ、まいったーーーー!!!」


「そこまでーーーー!

 勝者・ガビーーー!」


俺はすぐにスライムキングに水魔法ウォータを使い、火だるまから助けてやった。


「ふぉっふぉっふぉ。

 まさか、ファイア1発でやられてしまうとは・・・。

 参りました。」


俺は基本、戦闘においてファイアしか使わない。


これは俺の強すぎるがゆえの戦い方のルールみたいなもので、これ以上高位の魔法を使うと、相手を殺しかねないからだ。


つまり、俺は強さを認めた相手にしか、ファイアを超える技は使わないのだ。


俺はこの調子でファイアのみで予選を勝ち進んでいった。


すると、サリオンがやってきた。


「お前も予選は勝ち進んだようだな。

 準決勝で俺と当たるだろう。」


「ああ、そうだな。」


「はっ。相変わらずお前はファイアしか使えないらしいな。

 そのお得意のファイア、今までの格闘大会で俺はことごとく打ち負かしてきた。

 お前に勝つ算段でもあるってのか?」


当然、俺にとってこいつはカスだ。


こいつにはファイアしか見せたことがない。


「今年もファイア1本さ。

 まあ、やけどしないように気を付けることだな、サリオン。」


「なっ!ガビのくせに生意気な!」


こいつくらいならファイアの火力をちょっと上げれば余裕で消し炭だろう。


ちなみに、この世界には炎水風雷地の5種の魔法がある。

その5種それぞれに3段階のレベルの魔法が存在する。

例えば炎魔法で言えば、『ファイア』、『フレア』、『インフェルノ』の順で強くなっていく。


これに加え、伝説魔法が3つ。

『メテオ』、『カタストロフィ』、『ラグナロク』が存在する。


俺は当然、5種3段階の魔法に加え、伝説魔法もすべて使える。


サリオンはフレアまで使えるが、こいつのフレアは、俺の軽い火力のファイアと同等だ。


まったく、これ以上俺が強くなっては、こいつに負けるのもそろそろ難しくなる。


そうして、俺は準決勝に向かうのだった。


<作者あとがき>


次回、サリオン、ボコボコ!


評価ボタンをポチっとしていただけると大変ありがたいですm (_ _) m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る