第9話 レクリエーション開始

 結局、俺史上最速の走りは、廊下側にいたクラスメート達と、後ろから追いかけてきたクラスメート達によるスクランブルヒューマンボディプレスによって強制停止された。


「初めまして、石川盗夜です。石川が家名で盗夜が名前です。あんな課題が出てしまったのですが、女性の下着を盗んだことは一度もありません。どうか3年間、よろしくお願いします」

「偉いぞ、トウヤ! 噛まないでちゃんと言えたじゃないか!」

「そうだよ、自信持って! やれば出来るじゃない、トウヤ君」

「石川君、私は信じてるよ! 石川君はそんな酷い事はしない人よね⁉ だから、元気だして!」


 死にてぇ……。

 何だよコイツら全員良い奴かよ。やめてくれよ、惨めになるから。


「それでは、自己紹介も無事に終わりましたので、これからレクリエーションを始めたいと思います。みなさん、校庭に移動するので私についてきてください」

「待ってましたー!」


 ロイゼは一番に立ち上がると、ピッタリとアリス先生の後ろにくっつく。いいなぁ……。


「ろ、ロイゼ殿! ずるいぞ!」

「拙者達もアリス先生の後ろに行くでござる!」

「あの……、歩きづらいのでもう少し距離を開けてくれますか?」

「はーい!」


 アリス先生が教室から出ていくと、それに続くように他のクラスメート達も立ち上がり教室を後にする。


「さて、俺達も行くか」

「達って、アンタ誰に行ってんの?」

「俺は先に行く」

「ちょっ、待ちなさいよ!」


 ドロシーが慌てて立ち上がると、俺の腕を掴む。


「何だよ」

「わ、私と一緒に行きたいなら最初からそう言いなさいよね!」

「はぁ? そんなこと言ってないだろ!」

「え……い、今のって、そういう意味じゃなかったの?」


 ドロシーはショックを受けたような顔でパッと手を離す。

 何だろう、凄く悪いことをした気分だ。


「いや、その……」

「私を騙したのね! 許さない! アンタなんか吹き飛んじゃえ!」

「ちょおっ⁉︎」


 ドロシーの目が光ったと思った瞬間、俺は天井に叩きつけられていた。

 俺の意識は、ゆっくりと落ちていった。


閑話休題


「……はっ!」


 ガバッと起きると、教室の窓からは夕暮れが差し込んでいた。


「や、ヤバい! これもうみんな帰ってるんじゃないだろうな⁉︎」


 俺は慌てて教室から飛び出ると、人気のない校舎の出口に向かって走る。

 どうしよう。このままじゃあ、ドロシーのせいで明日から俺は甘噛みサボり下着泥棒とクラスメートから呼ばれてしまうかもしれない。


 階段を降りて1階に着くと、目の前に外に繋がる出入り口があった。


「頼む! まだ終わってないでいてくれ!」


 俺が一歩、校舎から踏み出すと、その瞬間、世界がぐるりと周り、気が付いたら森の中にいた。


「はい?」

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パンツを盗まないと英雄になれない?ちょっと詳しく説明してもらっていいですか? はるかうみ @ocean0709

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