第3話 三途学園

 俺は隣で狂った猿のように暴れてる女を呆然と眺める。


 そいつは、光の当たる場所が七色に輝く白い髪とアメジストの瞳を持った、叫び声と行動が猿でなければ美しい女だった。


「こんのクソ猿! 今日という今日はぶっころ……アンタ誰よ?」

「初めまして、石川盗夜と申します」

「トウヤ? 私はドロシーよ」

「私はモンキー?」

「アンタを殺すわ」


 その瞬間、炎が燃えるように髪の毛がブワァッと立ち上がり、その怒りと比例するようにメラメラと七色に輝き始める。

 爛々と輝くアメジストの瞳と整った顔立ち、陶器のように白くスベスベとした肌を併せ持つ、宝石のような彼女は、本当に言動以外は完璧な美少女だった。


「コラ!」

「きゃあっ!」

「ゥキャアッ?」

「あんた一体どういう耳してんのよ⁉︎ ムキーッ!」

「貴方達、仲良くなるのは結構ですが、周りにはまだ寝てる方がいるのですから、もう少し静かに喋ってください……」


 ドロシーの襟首を持ち上げたのは、金を編んだかのような黄金の髪を持つ、女神のような美貌を持った女性だった。

 顔面が強すぎて直視できない。ドロシーといい、ここは天女の住処なのか?


「あの、付き合ってください」

「はい?」

「あんた、鏡見てきた方が良いわよ」

「すみません、間違えました」


 いかんいかん、あまりに美しすぎて、本能的に告白してしまった。

 だが、ドロシー貴様は許さん。


「あの、ここは何処であなたは誰ですか?」

「私はアリスです。ここは何処なのか、それはこれから説明がありますので、今しばらくお待ちください」

「ていうか、いい加減離しなさいよ」

「失礼しました。ただ、これ以上あまり暴れないでくださいね。ドロシーさん」


 アリスは俺の隣にあった折りたたみ式の椅子の上に、ドロシーを優しく降ろす。


「ほら、トウヤ君もそこにある椅子に座りなさい」


 言われて、俺が自分の後ろを確認すると、そこには確かにドロシーと全く同じ椅子がある。

 ……さっき、こんなところに椅子なんてあったか?

 俺が恐る恐る椅子に座るのを確認すると、アリスは満足したように軽く手を叩く。


「ほら、そろそろ入学式が始まりますよ! 話している間に、貴方達以外、全員準備は出来たようです」


 その瞬間、瞬く間に周りに人の気配が現れ、空っぽだった部屋の中は、いつの間にか俺たちと同じように椅子に座った少年少女達が、所狭しと並んでいた。


「ようこそ、ここは英雄を育てる学園、三途学園です。入学を心から歓迎しますよ。ドロシーさん、トウヤ君」

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